つながるワイヤレス通信機器の開発手法(6) ――原理設計を行う 通信工学のおさらい

太田博之

tag: 組み込み

技術解説 2003年4月30日

●高周波を精度良く発振させるためにPLLを用いる

 一般にL(コイル)とC(コンデンサ)を組み合わせた回路によって発振させるが,コイルの代わりにさまざまな部品を使って発振させることが多い.その代表的なものを表4に挙げる.

 これらの部品とコンデンサ,トランジスタを使って発振器を構成する.最近は水晶発振モジュールや誘電体発振モジュールなど,発振回路がパッケージ化されたものも多く存在する.表4を見ると,一つの発振部品のみを使って高い周波数を精度よく発振する方法がないということがわかる.このような場合,PLL(phase locked loop)という技術を使って安定した高い周波数を得る(図6).PLLを用いると,安定度は水晶並みになり,かつ,誘電体のような高い周波数を得ることができる.また,分周比Nを変化させることで任意の周波数を得ることができるので,多くのワイヤレス通信機器で周波数設定用に使われている.

 フィルタも発振器と同じようにLとCの組み合わせで構成される.したがって,フィルタに使われる部品も表4とほぼ同じになる.フィルタには通過帯域の種類により,低域通過フィルタ(LPF),広域通過フィルタ(HPF),帯域通過フィルタ(BPF),帯域制限フィルタ(BEF)の4種類があり,使われる回路に対して適切なフィルタを選択する必要がある(具体的な使用方法は,周波数変換回路の箇所を参照).

 高周波技術では,上記の技術を組み合わせて機器の性能を出すようにしなければならない.しかし,最近はソフトウェア・エンジニアやディジタル・エンジニアが多く,高周波回路を設計できるエンジニアが減ってきている.そのため,パワー・アンプ・モジュールや発振モジュールなどのモジュール部品をうまく組み合わせることによって,要求性能やコストを追求する必要があるようだ.

 また,10年ほど前までは一部の技術者がそれまでの設計の経験と勘を頼りに高周波回路を設計することが多かった.最近は,シミュレータが多く使われるようになり,シミュレーション後に高周波回路設計を行うことが多くなってきた.

〔表4〕発振に使われる部品

部 品
安定度
動作周波数
水晶
もっとも高い
数kHz~十数MHz
SAWデバイス 水晶に次いで高い 数MHz~数百MHz
セラミック 低い 数kHz~十数MHz
誘電体 低い 数百MHz~数十GHz

 

f06_01.gif
〔図6〕PLL
PLLを用いると,安定度は水晶並みになり,かつ,誘電体のような高い周波数を得ることができる.

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