つながるワイヤレス通信機器の開発手法(6) ――原理設計を行う 通信工学のおさらい
2.ワイヤレス通信に必須の高周波技術
古くから高周波技術は,ワイヤレス通信機器に固有,かつ必須の技術である.数百kHzの中波放送や数MHzの短波放送,数百MHzのテレビ放送,数百MHz~数GHzの移動体通信などがある.取り扱う周波数は年々高くなってきており,その技術の難易度も高くなっている.高周波についての主な要素技術を表2に示す.また,図2は表2の技術がどのように使われるのかを簡単に示したものである.以下に各回路の詳細を説明する.
〔表2〕高周波における要素技術
要素技術
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機 能
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周波数変換 | 取り扱いやすい周波数に変換する |
電力増幅 | 送信電力を得るために増幅する |
低ノイズ増幅 | 受信感度を向上するために増幅する |
発振 | 周波数変換に必要な周波数を発振する |
フィルタ | 不要信号を除去する |
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〔図2〕高周波の送信側
A点に変調信号が入る.送信したときに電波に不要な信号が含まれないように,入ってきた変調信号の不要信号をフィルタで除去する.発振器では周波数変換に必要な周波数の信号を発振する.B点の周波数は数百MHzなので,送信周波数の800MHzや1.5GHzに周波数変換する.その信号を送信に必要な電力まで増幅させる.受信系ではこの逆の動作を行うが,受信感度を向上させるため,電力増幅の替わりに低ノイズ・アンプを使用する.