携帯電話プラットホームは技術者を幸せにしたのか?(1) ―― 今は昔,戦国時代の開発現場

吉田 昌平

tag: 組み込み

コラム 2008年8月18日

 かつての携帯電話開発の現場は,各社がそれぞれ新製品の開発にしのぎを削る"戦場"だった.開発競争という意味では今でも戦いは続いているが,CPUやOSの共通化,プラットホームの無償提供などさまざまな動きが起こっており,状況は変わってきている.このコラムでは,携帯電話開発の動向について,何が起こってきたのか,そしてこれからどうなっていくのかを概観してみたい.

●携帯電話がまだ「電話」だったころ

 携帯電話でできることが「通話」と「ショート・メッセージを送る」くらいで,楽しめる機能といえば着信音を自分で入力していた1990年代の始めごろ(第2世代の前半のころ),端末メーカはハードウェア,OS,ミドルウェア,アプリケーション・ソフトウェアのすべてを開発していた注1

 注1;1990年代以前からあった自動車電話やアナログ携帯電話を,携帯電話方式の「第1世代(1G:1st Generation)」と呼ぶ.第1世代においては,音声通話サービスが主体であり,着信音は電子音で,液晶ディスプレイなど使われていなかった.この世代ではITRONを使ったシステムもあったが,ポケベル(ページャ)などOSを使わないシステムも珍しくなかった.一方,1990年の春ごろから開発が始まったディジタル携帯電話を「第2世代(2G:2nd Generation)」と呼ぶ.国内では通信方式として主にPDC(Personal Digital Cellular)が採用されていた.

 各メーカの違いと言えば,機能の違いがそのまま開発コストの違いとして表れていた.CPUやメモリなどのシェア獲得合戦や,ソフトウェア開発の品質とスピードといった技術の競い合いが,市場での販売台数に直結していた.

 それまでは携帯電話の開発というと,独自のハードウェアにITRONに代表される低機能のOSを搭載し,その上にドライバとミドルウェア,ユーザ・インターフェースを実装していた.ハードウェアとしては,一つのCPUで無線制御と電話機能などを処理していた.ソフトウェアが使用するメモリのサイズもまだまだ小さく,開発規模も大きくはなかった.開発期間や品質のチェックには厳しいものがあり,関係するソフトウェア開発者は不具合の解析や対処などのために駆り出された.ただし,徹夜や休日出勤をいとわずにプログラムを総チェック(机上チェックやコード・レビュー)すれば解決できる規模だった,とも言える.

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