つながるワイヤレス通信機器の開発手法(6) ――原理設計を行う 通信工学のおさらい
●通信の品質を上げるために符号化/復号化技術を用いる
符号化/復号化には二つの意味がある.一つ目は音声などのアナログ信号をディジタル信号に変換することであり,二つ目は通信の品質を上げることである.今回は後者のみの説明にとどめ,前者の説明は別の機会に譲る.
移動体通信やそのほかのワイヤレス通信では,相手と離れており,さらにお互いの間に何が起こるかわからないといった理由により,エラー(誤り)が生じることが多い.エラーが起こると,受信側で正常な受信が困難になる.このエラーが通信に与える影響を減らすために符号化/復号化を行う.このような符号化/復号化を「エラー制御」と呼ぶ場合もある.
先に説明したマルチパスが起こると,それぞれのマルチパスが干渉し合って図17のような極端な落ち込みを見せる場合がある.このような箇所では,連続したエラー(バースト・エラー)が起こることが容易に想像できる.
一方,エラーを訂正する符号にはさまざまな種類がある.現在,エラーが連続して起こらないランダム・エラーを訂正する符号が一般的であり,回路も簡単ですむ.バースト・エラーをランダム・エラーに変える方法として,「インタリーブ」というものがある.インタリーブは,図18のように送信側であらかじめ送信する順番を変えて送信し,受信側では送信側で変更した決まりに従って並び替える.このようにすると連続したバースト・エラーが連続しないランダム・エラーになる.バースト・エラーが多く存在する移動体通信の世界では,インタリーブ+ランダム・エラー訂正符号が多く使われる.
〔図17〕マルチパスの干渉
マルチパスが起こると,それぞれのマルチパスが干渉しあって(b)のような極端な落ち込みを見せる場合がある.
〔図18〕インタリーブ
インタリーブは,バースト・エラーをランダム・エラーに変える方法である.送信側であらかじめ順番を変えて送信し,受信側では送信側で変更した決まりに従って並び替える.