つながるワイヤレス通信機器の開発手法(6) ――原理設計を行う 通信工学のおさらい
●アンテナへ十分な電力を供給する「電力増幅回路」
ワイヤレス通信では,アンテナから電波を飛ばして相手に伝える.アンテナから電波を飛ばすためには,多くの電力をアンテナに供給する必要がある.例えば,携帯電話の場合,1W程度の電力を供給している.1Wの電力を送信するためには,電流×電圧=1Wにする必要がある.通常,携帯電話の電池電圧は3.6V程度である.3.6Vの電圧で1Wにするためには約270mAの電流を流す必要がある.この電流を発生するための回路が電力増幅回路である.
数百MHz~数GHzの周波数で信号を増幅することができる部品としては,CMOS部品やGaAs FET(ガリウムヒ素FET)がある.これらの部品に電力制御回路,インピーダンス整合回路などを付加した「パワー・モジュール」と呼ばれる部品が携帯電話などではよく使われる.