ポストPC時代のキーワード「エンベデッド」のすべて ――転換点はカー・ナビゲーション・システム
●携帯電話はインフラ・サービスの手軽な端末へ変化
アナログ携帯電話の寿命は短く,ディジタル化が一気に進んだかのように感じる.
最近の携帯電話は,電子メールをはじめ,iモードに代表されるWeb配信サービスやMP3フォーマットによる音楽配信,Javaアプレット(iアプリ)に対応している.本来の「通話する」という性質からインフラ・サービスの手軽な端末としての性質へシフトした.次世代携帯電話サービスW-CDMAでは,動画像までもがコンテンツの対象になっている.一方,日本が独壇場となった家庭用ゲーム機の大手メーカは,「次世代ゲーム機の最大の競合相手は携帯電話である」とし,もはや「自分の領域はここまで」といった価値観では生き残れない,ダイナミックな変革が起きているのである.
●組み込みシステムを牽引するディジタル家電
米国では,1990年代後半からデスクトップ・パソコンとそのソフトウェア市場の頭打ちが起き始め,組み込み技術とその市場への投資,人材の流入が一気に加速された.1980~1990年代前半は,航空宇宙/軍需/テレコム/FAといった分野が組み込み技術をリードしてきたが,1990年代後半から現在までは,携帯電話,家庭用ゲーム機,セットトップ・ボックス(ディジタル放送受信チューナ)といった,まさに情報家電が主役となってきた.
ディジタル家電は,利用者の拡大やコンテンツの充実とともに,インフラ側に帯域幅などの容量アップをつねに要求し,ルータ,伝送装置,サーバといったインフラ側の技術革新を促し,市場全体を活性化させるまでの影響力をもつに至っている(図1).
〔図1〕 組み込みシステムを牽引するディジタル家電
ディジタル家電(クライアント側)は,個人や家庭,職場での生活を便利に楽しいものにする.この要求に対してインフラ側は,より良い環境(スピード,帯域幅)とサービス(情報,コンテンツなど)を提供しなければならない.