ポストPC時代のキーワード「エンベデッド」のすべて ――転換点はカー・ナビゲーション・システム
●組み込み向けLinuxの台頭
デスクトップ・パソコン市場で一大ムーブメントとなったLinuxは,組み込みシステムの世界にも広がりを見せてきている.Linuxを組み込みシステムに使いたい動機としては,ソース公開,ロイヤリティ不要,Linuxのネットワーク機能の充実などさまざまなようである.このなかでもネットワーク・プロトコルが充実しているのは魅力的である.
サーバOSとしても実績のあるLinuxは,インターネット端末にそのまま使え,さまざまな組み込みシステムに導入されそうだ.たとえば,Linuxコミュニティのパワー・ユーザが,PDAなどの携帯型端末にLinuxを移植している事例もある.
組み込みLinux専門のディストリビューションとして,米国Lineo社(http://www.lineo.co.jp/)や米国MontaVista社(http://www.montavista.co.jp/)などが製品を出してきた.これらのベンダは,リアルタイム拡張カーネルや技術サポートを提供したり,動作保証を行うなどの付加価値を提供している.
組み込み市場では,オープン・ソースの開発ツールであるGNUツールが幅広く受け入れられている.同様に,組み込みLinuxも,オープン・ソースであることや,UNIX系の膨大なソフトウェア資産を組み込める可能性を武器に,幅広く採用されていくのではないかと思われる.
組み込みLinuxの最新情報としては,英語サイトではあるがLinuxDevices.com(http://www.linux devices.com/)などを一度訪れてみてはどうだろうか.
読者のみなさんのなかにも,少し性能的に古くなった自作パソコンにLinuxを搭載している方もいるはずだ.LinuxはWindowsに比べれば1世代前のパソコンでもサクサクと動作する.この「軽い」ということが組み込みにはとても都合がよい.現在入手可能な最新の組み込みプロセッサはLinuxを動かすのに十分なスペックをもっているし,メモリ容量も十分に増えてきている.
日本では,組み込みLinuxの周辺技術の標準化を行うため「日本エンベデッド リナックス コンソーシアムEmblix(http://www.emblix.org/)」が設立された.会員一覧を見ると,半導体メーカ,家電メーカ,開発ツール・ベンダなど,じつに多彩 な法人が加盟していることがわかる.
●システムの仕様にあったOSの選択が重要になる
では,LinuxやJavaが組み込みシステムに採用され,将来的にはITRONやVxWorksはなくなっていってしまうのであろうか.組み込みシステムでは,搭載可能なメモリ容量,搭載可能なCPU,コスト,リアルタイム性,外部インターフェースの種類など,優先あるいは要求される仕様が実に多様である.LinuxやJavaの登場は,多様化した組み込みシステムのニーズに合わせたOSの選択肢の広がりであり,今後もITRONやVxWorksは主要なOSであり続けると考えるべきであろう.