ポストPC時代のキーワード「エンベデッド」のすべて ――転換点はカー・ナビゲーション・システム
●海外からのライセンスを受けた組み込みCPU
一方で,米国MIPS Technologies社や英国ARM社といった海外のIPベンダからライセンスを受けて製造されているCPUもある.
代表的な家庭用ゲーム機のPlayStation,Nintendo64,PlayStation 2はすべてMIPSアーキテクチャのCPUを搭載している.MIPSはもともと高性能なワークステーション向けのRISCアーキテクチャのCPUである.演算能力が高く,ジオメトリ演算やレンダリング処理を必要とする3Dのゲーム機や,高性能プリンタなどに採用された.
ARMは消費電力を抑えて性能を向上させることをねらったアーキテクチャとして,Apple社のPDA Newton MessagePad(写真4)に採用されたことで有名だ.次世代携帯電話のW-CDMAでは,端末側の標準OSであるSymbian社のEPOCがARMをプライマリCPUとして採用している.「消費電力を抑えて性能を向上させる」というARMの特徴は,携帯電話や携帯ゲーム機に適している.
●CPUアーキテクチャを活かしたデザイン・インが重要
シンプルな構造でPDAのベストセラーとなったPalm は,68000コアとLCDコントローラやI/Oを1チップ化したDragonBall(68VZ328)を搭載している.今後,Java対応やワイヤレス対応が必要とされる次世代Palmでは,ARMが標準CPUになる.このためMotorola社はARM社からARMコアのライセンスを取得し,DragonBallと類似の周辺回路を内蔵したARMベースのCPUを供給する予定だ.
アーキテクチャの特性を活かして,いかにアプリケーションにデザイン・インできるかが組み込み向けCPUとして受け入れられる前提条件となっているようだ.デザイン・インした最終製品が量産されれば,十分な採算を取った上で他への有利な展開も可能となろう.そういった意味で,デザイン・インが生き残りのポイントとなりそうだ.アーキテクチャの主権争いなど,組み込み市場においては古くて意味のない話なのかもしれない.
〔写真4〕Newton MessagePad