需要が拡大する自動車制御OSを知る ――機能向上に対応するには開発効率向上が必須
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統合制御
統合制御の一例として,安全性能の一つである「車両姿勢制御(VSC:Vehicles Stability Control)」を説明します.姿勢制御は,アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)と静止摩擦制御(TRC:Traction Control)を組み合わせて統合的に車を制御することにより,走行中の自動車の姿勢を制御するシステムです.ECUで言うと,エンジン制御ECU,ブレーキ制御ECU,サスペンション制御ECUなどを協調して動作させます.
すなわち,前後左右の車輪速度センサ,コーナリング時の横ずれを感知する横Gセンサ,車の方向を感知するヨーレート(上から見た車両の回転速度)センサ,ステアリングの舵角センサ,エンジン回転数,4輪それぞれのスリップ状況などから車両の状況を判断し,各車輪へのブレーキ制御やエンジン・スロットル制御により,車両の姿勢を制御します(図A-1).具体的には,限界旋回時に左右どちらかの車輪に自動ブレーキをかけたり,エンジン出力を抑えて車両の向きを制御します.ブレーキで制御するには,アンダーステア(前輪が滑り,ハンドルを切っても曲がらない)の場合には内輪に,オーバステア(後輪が滑り,ハンドルを切った以上に曲がってしまう)の場合には外輪にブレーキをかけることにより,車両の横流れを抑制できます.エンジン出力で制御するには,後輪駆動車ではオーバステア時に,前輪駆動車ではアンダーステア時にエンジン出力を抑えます.
統合的にシステムを制御するため,スキッド(横滑り)コントロール・コンピュータが統合指令ECUとなり,各機能を担当するECUや各種センサと情報交換し,相互連携して制御します.