需要が拡大する自動車制御OSを知る ――機能向上に対応するには開発効率向上が必須
● クランク角度同期
一般的なOSの場合,OSが管理する時間を基本として同期処理が実行されます.しかし,自動車制御(とくにエンジン制御)においては,クランク角度に同期して処理を行う必要があります(図6).クランク軸の角度によりプラグ点火,EGR(exhaust gas recirculation;排ガスの一部を吸入系統に導入して再循環させ,燃焼温度を下げてNOx(窒素酸化物)の発生量を低減する方法),吸気流量制御などを実施したいためです.具体的には,クランク角度が(例えば1°)動くごとに割り込みを発生させ,割り込みを加算してクランク角度を計測しながら処理実行のタイミングを求めるなどの方法を採ることになります.
OSEK-OSでは,カウンタ機能とアラーム機能(繰り返し発生するイベントを扱う機能)を利用することにより,任意のクランク角度に同期させることができます.クランク角度の移動量をカウンタで積算し,カウンタ数値状況によってアラーム満了とし,アプリケーションに通知します.
図6 クランク角度同期の必要性
エンジンECUには各種センサ(吸入空気量,O2,ノッキング,クランク角)が接続されている.その入力値から最適な空燃比を算出し,各種アクチュエータ(スロットル,燃料インジェクタ,EGRバルブ,点火プラグ)に指令を行う.また,エンジン制御はプロセッサのクロック時間同期ではなく,クランク角度に同期して適切な動作指令(発火タイミングなど)を行う必要がある.ECU搭載前の自動車ではすべて機械的に調整していたため,きめ細かく制御できず,燃費や排気ガス性能などが劣っていた.