需要が拡大する自動車制御OSを知る ――機能向上に対応するには開発効率向上が必須
● ネットワーク同期:ネット上のクロックが基準
ネットワーク同期とは,ネットワークに接続されるすべてのECUがネットワーク上に流れるクロックに同期して制御を行うものです.例えば,センサと五つのECU,出力プラグが1列につながっているシステムを考えます.センサ入力からプラグ出力まで10msの時間を保証する必要がある場合,各ECUの送受信の最悪値として各ECUのクロック・ベースで1ms周期で通信すれば,最悪のケースでも10msを保証できます.しかし,すべてのECUを1msで通信させるためには,機能で考えると必要以上のECU性能を要求することになり,結果としてECUのコストが高くなります.また,車両によって保証する時間が異なった場合,そのつどシステム全体を再設計する必要が出てきてしまいます.
そこで,ネットワーク時間同期という発想が必要になります.すなわち,ネットワーク上に基準となる時間情報を持ち,その時間に合わせて送受信します.例えば,ECU1はネットワーク基準開始時間の1ms後にセンサ情報を送信し,ECU2は基準時間の1msにセンサ情報を取得し,その内容を演算して1.5msにデータを送信します.これらの通信スケジュールは静的に設計されているため,個々のECUは10ms周期で処理が一巡していれば問題ありません.これにより,ECU性能は1/10程度で動作します.
複雑化するネットワークを利用するうえでネットワーク同期の概念は非常に重要です.この概念は,TTCAN(Time-Triggered CAN)やFlexRayなどの通信で用いられています.OSEK-OSはこの機能に対応していませんが,前述したOSEKtime仕様は対応しています.