時刻認証と連携可能な通信プロトコルをRFIDタグに応用 ――「時」をめぐる新しいビジネスと技術を開拓する
● インターネットと時刻認証の必要性
ところで,最近,みなさんもインターネットを使った電子決済やオンライン・ショッピングで買い物をすることがありませんか.急速なコンピュータ・ネットワークの発達によって,非常に便利,かつ,スピーディな世の中になってきていますが,その一方で,ネットワークのトラブルや情報の改ざんといった新たな問題も生まれてきています.これまでの,印鑑で捺印した書類や貨幣のやりとりによる取引,特に相手の顔が見えている対面販売などを中心とする「リアルの世界」と同じように,このような「バーチャルの世界」でも,よりどころや基準となるものが必要になってきています.
実際の情報通信では,セキュリティ対策として,パス ワードや暗号化技術によるさまざまな対策が行われています.また,バイオメトリックス技術を使った本人確認の技術開発も進んでいます.ところが,情報の漏えいや改ざん,なりすましなどの問題は,完全に解決されているとは言えない状況です.そもそも,距離的にも時間的にも離れた見ず知らずの人どうしが何かの契約や取引を行うわけですから,何かしらの共通の「基準」や「取り決め」なくして成立させるほうが難しいとも考えられます.
現在のところ,この共通の基準となりうるのが「時刻」です(図3).それも,第3者に認証された時刻情報と考えられています.確かに,世の中には多くの取り決めや方式,基準がありますが,時刻だけが「この世のあらゆるものにあまねく平等な基準である」と言えます.この際,よりどころとなる時刻は絶対的である必要があり,正確に協定世界時もしくは日本標準時を反映したうえで,かつ時刻監査と呼ばれる行為によってそれを保証できなくてはなりません.
図3 時刻認証が必要になると考えられる場面
ネットワーク社会では,その絶対的な基準として,セキュアな時刻情報が求められる.