時刻認証と連携可能な通信プロトコルをRFIDタグに応用 ――「時」をめぐる新しいビジネスと技術を開拓する

松井 幸夫

tag: 組み込み

技術解説 2004年7月28日

● 究極の同期式時計―バケツ・リレー方式

 これまでお話ししたように,これからはスタンドアローンの「精密な」時計よりも,標準時やシステム全体に同期した「正確な」時計が重要視されると考えられます.

 話は戻りますが,現在販売されている電波時計の弱点は,屋内における受信です.窓のない部屋の中やパソコンの近く(ノイズがある環境)では,電波を受信できないことがあります.では,この問題を解決するには,受信電波をブーストして送り直せばよいのでしょうか?
確かに技術的にはそれで解決するかもしれません.しかし,現実には国内では電波法という法律があり,自由に電波を出すことは許されていません.また,まったく同じ形式で電波を出した場合,AM変調の標準電波という性格上,少しでも位相がずれた電波を出して混信すると,周波数標準として利用している利用者に多大な影響が出ることも考えられます.

 そこで,標準電波とは異なる通信媒体で情報を配信し直すことが考えられます.日本国内の無線では,微弱無線と特定小電力無線が有力です.微弱無線の電波の強さでは,耐ノイズ性の問題が発生してしまいます.一方の特定小電力無線でも,到達距離が通常100m程度なので,一つの送信機でオフィス全体やビルをまかなえません.また,単純に送信機を増やせば,無線の混信を起こしてしまいます.

 そこで考え出されたのが,それぞれの時計が送受信機能を持ち,隣の時計に「バケツ・リレー」式に時刻を伝達していくという方法です(図4).同じ時刻データを受け渡していくと,電波伝搬遅延や処理遅延などで時間がかかり,当然ながら正確な時刻を伝達できません.

 そこで,一つの通信が済むたびに,受信した時刻情報を遅延時間の補正とともに自身の時計に反映します.つまり,受信した「時刻データ」を「時計の動作」に移し替えるのです.そして,時刻データを送信する際,動き続けている「時計」から新たなデータを作って送信すれば,通信の遅延時間の問題は回避できます.こうすることによって,通信による遅延時間をキャンセルしながら,時間をかけてバケツ・リレーを行うことができるのです.これは,「時間」が共通の基準であることから成立する方法です.

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図4 バケツ・リレー通信のイメージ
時刻情報を正確なタイミングで隣の時計にバケツ・リレーする.電波の届く範囲内で,無線ネットワークを自動生成する.

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