時刻認証と連携可能な通信プロトコルをRFIDタグに応用 ――「時」をめぐる新しいビジネスと技術を開拓する
2 時間同期の基礎知識
ところで,カー・ナビゲーションなどでおなじみのGPS(Global Positioning System)は,いったいどうやって正確な位置情報を取得しているのでしょうか?地球の上空約2万kmを周回する24個のGPS衛星には,原子時計が搭載され,正確な時刻情報(GPS時刻注2)と衛星の位置情報を発信しています.この電波を受信することで,受信者はその時刻情報を取得できますが,これは衛星から受信者までの間の電波の伝搬遅延時間を含んでいます.逆に,この遅延時間を正確に測定できれば,衛星からの距離を求められます.
通常,受信者は正確な時計を持っていないので,求める値は受信者の場所の3次元情報(x,y,z)と,時刻(t)の4変数となります.よって,四つの衛星からの電波を受信し,4元連立方程式を解くことで,すべての変数x,y,z,tを求めることができるのです.このことからわかるとおり,GPSは地球規模の同期システムであり,正確な位置情報取得と同時に,正確な時刻も同時に取得している「時計」でもあります.この特性を利用して,最近では時計の時刻情報源としてGPSが利用される機会も増えてきました.
わたしたちが無意識に利用している機器も,上記のような正確な時刻を持って作動(結果的に同期)しています.あるいは,現代の人間社会そのものが同期システムになっていると言えるのかもしれません.
注2;GPS時刻は,人為的なうるう秒が入らない,ある時点からの通算時間の数値である.そのため,協定世界時や日本標準時への変換が必要.