時刻認証と連携可能な通信プロトコルをRFIDタグに応用 ――「時」をめぐる新しいビジネスと技術を開拓する

松井 幸夫

tag: 組み込み

技術解説 2004年7月28日

 一方,電波時計の受信アンテナがそんなに巨大では使いものになりません.ほとんどの電波時計には,AMラジオのアンテナと同様の,バー・アンテナが搭載されています.これは,フェライト・コアに導線を巻いてインダクタにし,キャパシタと並列共振させることで周波数同調をとっています.しかし,長波標準電波が使っている長波帯は,もともと非常にノイズが多い周波数帯です.最近増えてきたインバータ機器やスイッチング機器は周波数を可聴帯域外の20kHzより上に設定することも多く,その高調波ノイズもたくさんあります.

 図2は,長波標準電波の電界強度対距離のグラフです.現在の長波標準電波は,1999年まで試験電波として運用されていた「JG2AS」と比べて15~20dBほど電波が強くなりました.それでも送信アンテナからの距離が500km以上になると,電界強度は60dBμV/m前後になります.この値は屋外の理想的な環境条件の場合であり,これが屋内の受信になると,さらに数dB~数十dB減衰します.こうなると,電界強度は微弱無線と同等のレベルになってしまうので,少しでも同じ周波数帯にノイズがあると受信に問題が発生してしまいます.

 この問題を解決するため,電波時計は水晶振動子を使った非常に急しゅんなバンドパス・フィルタを内蔵しています.このフィルタの通過帯域幅を数Hz~数十Hzに狭めることで,ノイズの影響を最小限にしています.

 しかし,AM変調された搬送波を急しゅんなフィルタに通すと,結果的に復調対象である時刻情報信号の1Hzの矩形波がなまってしまいます.つまり,「立ち上がり応答の精度」と「対ノイズ性能」がトレードオフになっているのです.また,電波の伝搬遅延による誤差も受信場所によって変化し,受信時刻精度に影響を与えます.よって,一般に販売されている電波時計は,通常,数十msの誤差を持っています.普通の人には気にならないレベルですが....

 余談ですが,電波時計のキャッチ・コピーにある「10万年に1秒の誤差」は,長波標準電波の時刻源である原子時計の誤差であり,厳密に言えば電波時計そのものの精度ではありません.しかし,民生用の一般的な時計が,スタンドアローンの時計から,協定世界時または日本標準時に同期して作動する「システム」の一部となったことの意味は非常に大きいと言えます.すなわち,電波時計は水晶振動子により必要十分な時間精度を確保したうえで,長波標準電波受信により長期的な累積誤差を修正し,かつ標準時に同期する,いわば「システム時計」なのです.

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図2 長波標準電波の電界強度対距離グラフ
長波標準電波の電界強度は,近距離では距離の2乗に反比例し,中遠距離では距離に反比例する.1999年まで運用していた試験電波JG2ASと比べ,現在のJJYは20dB弱のゲインがある.

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