時刻認証と連携可能な通信プロトコルをRFIDタグに応用 ――「時」をめぐる新しいビジネスと技術を開拓する
1 「時間」の定義をご存じですか?
みなさんは,「時刻」と「時間」ということばをどのように使い分けていますか?
感覚的には,"今その時"を示す「○時○分○秒」が「時刻」であり,"ある時刻とある時刻の間"を指して「時間」と呼んでいると思います.
では,見かたを変えて,「時間」の積み重ねが「時刻」であると考えてよいのでしょうか.まず,このあたりから話を始めたいと思います.
● 「時間」は厳密,「時刻」は受動的に定められた値
「秒(s)」は,「速度(m/s)」や「データ転送速度(bps)」などの例でもわかるように,現在の科学技術においてとても重要なディメンション(次元)です.「秒」は時間の基準ですが,みなさんは「1秒」の定義を知っていますか?
1秒は,量子力学的には「セシウム133原子の基底状態の二つの超微細準位間の遷移に対応する放射の91億9263万1770周期の継続時間」と定義されています.この正確な(誤差が数十万年に1秒)セシウム原子時計をもとに,1958年1月1日0時を基準にして,世界中の原子時計の時刻を加重平均することによって決定しているのが「国際原子時(TAI:International Atomic Time)」です.
一方,私たちは地球の自転により朝を迎え,公転により季節を感じています.これらの地球の運行に基づく天文時系を「世界時(UT:Universal Time)」と呼びます.この世界時は一見安定しているように思えます.しかし,地球の自転は潮汐摩擦(潮の満ち引きによって起こる海水と海底の摩擦)などの影響で変化するため,実は不安定なのです.その結果,国際原子時と誤差が生じます.