2.5G/3G携帯電話の要素技術 ――通信以外の機能が充実し,複合サービス端末へ変身
●赤外線通信:NTTドコモの504iがIrMCを全面採用
NTTドコモの504iシリーズ全機種にIrMC(Infrared Mobile Communication)準拠の赤外線通信インターフェースが標準装備されました.IrMCとは,赤外線通 信の標準化組織であるIrDA(Infrared Data Association)が策定した携帯端末向けの赤外線通信規格です.スウェーデンのEricsson社,米国Hewlett-Packard社,松下通信工業,フィンランドのNokia Mobile Phones社,NTTドコモなどが中心となって仕様をまとめました.電池駆動の機器を想定しており,伝送速度は最大38.4kbps,通 信距離は最大20cmです.
NTTドコモの504iシリーズは,IrMCの機能であるvBookmark(URL情報のフォーマット)やvTrigger(外部機器から赤外線ポートを介してiアプリの起動を指示するフォーマット)などを使って,携帯電話とそれ以外の機器の間で情報をやりとりします.
これらとiアプリ(Javaプログラム)を組み合わせると,さまざまな機能を実現できます.例えば,通信距離が短く,傍受される可能性が低いので,電子決済の認証に使うことが検討されています.また,健康器具と携帯電話をIrMCでつなぎ,健康器具に蓄積された運動量 ,血圧,心拍数などの情報を携帯電話経由でインターネット・サーバに転送するような応用も提案されています.
リンク・エボリューションなどがIrMC準拠の専用LSIをすでに発表しています注2.図4に同社のLSI「Legasic CE」のブロック図を示します.Legasic CEはIrMCのプロトコル・スタックを内蔵しており,外部にホスト・コントローラ,水晶振動子,IrDAトランシーバ(赤外線LEDとフォトダイオードをモジュール化した部品)を接続するだけで動作します.アプリケーション側のプロセッサ(図4のホスト・コントローラ)との通信はシリアルで行います.
注2;リンク・エボリューションのホームページのURLは「http://www.linkevolution.co.jp/」.
〔図4〕 IrMC専用LSIの例
リンク・エボリューションが開発したLegasic CE.IrMCのプロトコル・スタックを内蔵している.ホスト・コントローラ,水晶振動子,IrDAトランシーバを接続するだけで動作する.