LED照明や3Dテレビなど,明日の家電が続々 ―― CEATEC JAPAN 2009レポート
2009年10月6日~10月10日の5日間,「デジタルコンバージェンスが明日を作る,未来へつなぐ」をテーマに「CEATEC JAPAN 2009」が幕張メッセ(千葉県美浜区)にて開催された(写真1).主催は,情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ),社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA),社団法人 コンピュータソフトウェア協会(CSAJ).展示会場では,電子部品,デバイスから,ディジタル家電,携帯電話,各種サービスやコンテンツまで,幅広く紹介され,IT・エレクトロニクス業界をリードするキーパーソンによる講演なども行われた.
今年で10回目を迎える本展示会は,主催者のメッセージとして,「Challenge! 豊かな暮らしと低炭素社会への挑戦」を掲げ,NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)とも協力して,最新の省エネ技術や燃料電池,風力発電などを紹介する「グリーンITパビリオン」を設置した.出展社数は,景気の影響のせいもあってか,前年の804社から590社へ,展示小間数も3121小間から2123小間へと減少した.
● 環境負荷の少ない低炭素型照明として注目を集めるLED照明
LED照明は,蛍光灯や白熱電球などの従来の照明器具と比較して消費電力を低減できるうえに製品寿命も長いため,環境負荷の少ない低炭素型照明デバイスとして注目されている.課題となってきた製造コストや放熱対策などの技術的な要件も解決されつつあり,本格的な市場の立ち上がりも間近に迫ってきたといわれている.また,製造プロセスに最先端の半導体製造装置を必要としないため設備投資が行いやすく,参入障壁が低いともいわれており,製造装置や部材メーカにとって,ビジネス・チャンスを拡大する成長市場として期待されている.
サンケン電気は,2009年9月17日発表の同社の電源技術を活用したLED照明用ドライバIC「LC5300シリーズ」を展示した(写真2).第一弾となる「LC5320S」は,4.75V~50Vの入力電圧に対応し,5.2mm×4.4mm×1.5mmの小型面実装パッケージを採用する.一つのICで複数のLEDを直列接続でき,照明機器の部品点数を削減できるのが特徴となっている.昇圧,降圧,そして両方を合わせた昇降圧の3タイプで作動するため,電圧が変動する入力電源を使う際にも安定した出力電圧を供給できる.また,調光機能や過熱保護回路なども備える.2010年3月から月産30万個の生産を予定しており,スポット照明やダウンライト,産業機器用照明,街路灯,広告看板向けなどでの需要を見込んでいるという.サンプル価格は300円.
LEDシステムズは,「LED蛍光灯」,「LEDダウンライト」,「LED防犯灯」などを展示した(写真3).LED蛍光灯は,10型,20型,40型,110型の4種類の蛍光灯を用意し,電源はAC100V~AC240Vの専用電源を使用する.消費電力は,それぞれ8W/10型,12W/20型,22W/40型,44W/110型で,寿命は約40,000時間.発光色は昼白色(色温度は5,500~6,000K)で,温白色と電球色については受注生産に対応するという.既存の蛍光灯と比較すると,消費電力で1/2以下,電力寿命でも6~8倍となっており,実際に導入している企業もすでに多いという.
創輝は,同社の「SOKI-Lightシリーズ」の電球タイプや街灯タイプなどを展示した(写真4).電球タイプでは,従来の白熱電球と比較して消費電力を約90~95%削減し,製品寿命は約30倍の50,000時間を期待できるという.衝撃に強いポリカーボネートを採用しているため,割れにくいという特徴を持つ.また,赤外線や紫外線をほとんど発生せず,防虫効果もあるため,衛生的な環境を必要とする病院や公共施設などの照明にも適しているという.
● 燃料電池を内蔵した薄さ約20mmの携帯電話を展示
KDDIは,東芝と共同開発による,燃料電池を内蔵した携帯電話の試作機を展示した(写真5).本携帯電話は,厚さ22mmと薄く,燃料電池部分の付け外しも可能.また,本体の側面に燃料の注入口があり,裏面から燃料の残量を確認できる.燃料カートリッジから携帯電話に内蔵された燃料タンクにメチル・アルコールを注入すると,400mWのDMFC(ダイレクト・メタノール型燃料電池)セルが発電する.発電した電力は,DC-DCコンバータを通して携帯電話本体に供給されると同時に,内蔵されたリチウムイオン電池にも蓄電される.本体の消費電力が発電量を超過すると,リチウムイオン電池からも電力を供給し,動作を補助する仕組みとなっている.現在,商品化の時期は未定という.
● NTTドコモ,LTE向けの通信用プラットホーム構想を提示
NTTドコモは,LTE(Long Term Evolution)向けデータ通信端末用プラットホーム「LTE-PF」やコンセプト・モデルを展示し,LTEの導入に向けた同社の取り組みを紹介した(写真6).LTEのRelease.8は,3G(第3世代携帯電話)の標準化団体である3GPP(Third Generation Partnership Project)によって2008年末に標準化が完了しており,同社ではこのLTE仕様に準拠した設備の開発を進めている.
今回展示されたLTE規格に準拠した通信用プラットホームは,当初,W-CDMAなど3Gとのデュアル端末として展開する予定だったが,NEC,パナソニック モバイルコミュニケーションズ,および富士通の3社と共同開発(製造はルネサス テクノロジー)を行った.本プラットホームは,受信時最大100Mbps,送信時最大50Mbpsの高速データ通信を可能とする.W-CDMAおよびGSMの通信システムとの連携も可能で,LTEとW-CDMA/GSMエリア間の移動に際しても,スムーズな切り替え(ハンド・オーバ)でシームレスな通信環境を実現するという.
また,将来的には本プラットホームを日本国内だけでなく,世界の携帯電話市場に向けてライセンスとして提供することも検討しており,携帯電話メーカやチップセット・メーカは,本プラットホームを採用することにより,LTE対応携帯電話の基本機能を独自に開発する必要がなくなり,開発期間の短縮や開発コストの低減を実現できるという.
● 低価格大型化からフルハイビジョン3Dへ進化する次世代テレビ
CEATEC Japanで来場者の高い注目を集める家電分野は,例年,「液晶ディスプレイ」と「それを応用したテレビ」である.今年は,「3D」や「4K2K(フルHDの4倍の解像度)」などの次世代テレビが注目を集めていた.特に3Dについては,ソニー,パナソニック,東芝,シャープなどほぼすべてのテレビ・メーカが試作品を展示しており,実際に来場者が3D映像の視聴を体験することもできた.
ソニーのブースでは,「Sony brings 3D Home in 2010」のキャッチ・コピーで,3D元年の到来が来年であることを強調していた(写真7).
パナソニックのブースでは,3D対応のBlu-ray Discプレーヤを展示し,ブースのいたるところで再生のデモンストレーションを行なっていた(写真8).
東芝は,ブース全体を使って高性能半導体「Cell Broadband Engine」を搭載したテレビ「CELL REGZA」を展示した(写真9).「CELL REGZA」の機能を拡張し,センサによる遠隔操作機能を搭載した3Dテレビのデモを行った.
※ 当初,「ブース全体を使って高性能半導体『Cell Broadband Engine』を搭載した3Dテレビ『CELL REGZA』を...」となっていましたが,「ブース全体を使って高性能半導体『Cell Broadband Engine』を搭載したテレビ『CELL REGZA』を...」の誤りでした.お詫びして訂正します.
シャープのブースでは,「LED AQUOS」に採用された液晶パネル「UV2A」とLEDバックライトを組み合わせたフルHD 3Dの液晶テレビを展示していた.
● ワンセグ・チューナを搭載した400gのモバイル・パソコンを展示
工人舎は,本体サイズが161mm×111mm×10~26mmで,重量が約400gのUMPC(Ultra-Mobile PC)「KOHJINSHA PAシリーズ」を展示した(写真10).本PCは,ワンセグ・テレビ・チューナを内蔵,ディスプレイが回転する機能なども備え,56キーボードを採用する.CPUとしてAtom Z520(1.33GHz)を搭載し,メモリは512Mバイト,このほかIntel US15Wのチップ・セット(ビデオ機能内蔵),32GバイトのSSD(Solid State Disk)などを備え,OSにはWindows XP Home Edition(SP3)を採用する.また,WSVGA(1,024ピクセル×60ピクセル)に対応した4.8型のタッチ・パネル付き液晶ディスプレイを使用している.インターフェースとして,SDHC(Secure Digital High Capacity)に対応したmicroSDカード・スロット,IEEE 802.11b/gに対応した無線LAN,EDR(enhanced data rate)に対応したBluetoothバージョン2.0,ワンセグ・テレビ・チューナ,Webカメラ(130万画素)などのインターフェースを備える.バッテリ駆動時間は約7.5時間.