2.5G/3G携帯電話の要素技術 ――通信以外の機能が充実し,複合サービス端末へ変身
●3次元グラフィックス:IPコアの出荷も始まる
3次元グラフィックス機能も,IrMCと同じくNTTドコモの504iシリーズから採用された機能です.キャラクタを上下左右に移動させたり,立体的に見せて回転させたりできます.
3次元グラフィックスの機能はソフトウェアでもハードウェアでも実現することができます.現在の携帯電話ではその大半がソフトウェアで実現されています.解像度が上がり,より複雑な動きが増えてきた場合には,ソフトウェアで実現することは難しく,ハードウェアで実現するほうが現実的です.
3次元グラフィックスの機能をハードウェア化する場合,「演算用フレーム・バッファが必要になる」,「ゲート規模が小さく,独立したICになりづらい」,「入出力のピン数が多い」といった問題があります.こうした問題を解決する手法の一つとして,3次元グラフィックス処理回路をLCDコントローラに組み込むという方法があります.こうすれば,LCDコントローラと1チップ化されるので,「省スペース,省ピン,省パッケージを実現できる」,「フレーム・バッファをLCDコントローラ内のバッファ・メモリと共有できる」といった利点があります.もっとも,製造プロセスの微細化が進んでメモリのサイズが小さくなれば,LCDコントローラ以外のLSIにグラフィックス処理回路を組み込むという方法も考えられます.
今後,しばらくの間,3次元グラフィックス処理回路をどのように実装するのかが問題になると予想されます.携帯電話向け3次元グラフィックス処理回路のIPコアを提供している企業としては,フュートレックなどがあります注6.
注6;フュートレックのIPコアには,レンダリング処理回路だけでなく,ジオメトリ処理回路(3次元ポリゴンを構成する頂点の座標変換,光強度計算,陰面処理などを行う幾何演算回路)も組み込まれている.つまり,携帯電話のメインCPUに負担をかけることなく,3次元グラフィックス機能を実現できる.また,3次元機械系CADや3次元グラフィックスを利用するゲームの開発環境とのインターフェースを考慮したグラフィックス・ライブラリを用意している.詳細については「http://www.fuetrek.co.jp/」を参照.