高速インターフェース規格ガイド ――Serial ATA,3GIO,InfiniBandから10GビットEthernetまで
4.IEEE 1394.1
1394バスを複数接続するための規格
Dave Sroka
「1394」,「Firewire」,「i.Link」と呼ばれるIEEE 1394規格は,パソコンやパソコン周辺機器,情報家電などで広く利用されています.その一方で,1394に多数のデバイスを接続したり,本格的なディジタル・ホーム・ネットワークを構築する場合,アーキテクチャ上,次のような限界があります.
- 最大63個のノードしか接続できない.
- 各ノードは,限られたバス帯域幅をほかのすべてのノードと共有しなければならない.
- バス・リセットにより,バスの効率が悪くなる(特にノード数が多い場合).
つまり,1394はバス上のノード数が増えると,その性能は低下します.IEEE 1394.1は,複数の1394のバスを接続するための規格であり,上記の接続性の問題を解消したり緩和したりします.1394.1には以下の特徴があります.
1)事実上無制限の接続ノード数
ネットワーク内でそれぞれノードを63個まで持てるバスを最大1,024個利用できます.それぞれのネットワーク内ノードの理論最大数は63×1,024個となります.
2)利用可能な帯域幅の増加
1394.1ブリッジは,ローカル・トラフィックとグローバル・トラフィックを分離します.ネットワークの一部分で使用される帯域幅が,残りのネットワークの部分で利用される帯域幅に影響を与えないようにします.つまり,1394.1ブリッジにより,ネットワーク内で多くの帯域幅を利用できるようになります.
3)ネットワークの安定化と効率化
1394.1ブリッジは,バス・リセットが一つのバスからネットワークのほかの部分に伝わらないようにすることにより,ネットワーク全体をより安定させます.バス・リセット中はデバイスの検出と接続確立のために大量のトラフィックが生成され,実行中のアイソクロナス転送が中断することがあります.1394.1では,特定のバス上のデバイスの数を管理し,一つのバス上に多数のノードが存在する場合に生じる性能の劣化を防止することができます.
上記の2)と3)は,家庭のような環境で使用される場合に必要となります.
また,1394.1は新たに開発された無線規格のWireless 1394においても重要な役割を果たします.1394.1ブリッジは,下位層のプロトコルを分離して,上位プロトコルのトランスペアレンシ(透過性)を提供します(図6).つまり,上位プロトコルの保全性を維持しながら,1394バス・セグメントと無線ネットワークを置き換えることができます.
1394.1規格のドラフトは,昨年(2001年)初期発起人投票が終わりました.現在,改訂作業中であり,今年後半に2回目の投票用紙が回覧され,2003年に正式に承認される見込みです.
〔図6〕 IEEE 1394.1ブリッジ
1394.1ブリッジは,下位層のプロトコルを分離して,高位プロトコルのトランスペアレンシを提供する.なお,1394CL(Convergence Layer)は1394とワイヤレスのプロトコル変換を行うための層である.ワイヤレスDLC(Digital Link Layer Controller)は,ワイヤレス用のリンク層であり,MAC層とも呼ばれる.
Dave Sroka
Philips Semiconductors社