高速インターフェース規格ガイド ――Serial ATA,3GIO,InfiniBandから10GビットEthernetまで
9.RapidIO
分散システムまで見据えたサブシステム接続規格
岡澤幸一
RapidIOは,米国Motorola社と米国Mercury Computer Systems社が開発した技術をベースとしたシステム間の相互高速接続アーキテクチャです.2000年にはRapidIO技術を促進する非営利団体であるRapidIO Trade Associateが生まれました.現在では,半導体メーカやネットワーク機器メーカ,ソフトウェア・ベンダなど40社以上の企業がその策定に参加しています(詳細はRapidIO Trade Associateのホームページhttp://www.rapidio.org/を参照).
RapidIOが登場した背景には,ネットワーク機器における通信制御の高速化や帯域幅の拡大の要求があります.その端的な例がネットワーク・スイッチの分野です.Gbpsに及ぶ通信を高速にルーティングしてスイッチする装置を設計する場合,一つのシステムはルートを計算するユニットや,決定されたルートの接続を実現するスイッチ・ユニットなど複数のユニットから構成されます.ここで,このユニット間を高速に接続する技術が必要となりますが,従来のバス技術(PCI,PCI-Xなど)では求められている要求を実現できない段階に入りつつあります.
●最大1GHzのLVDS伝送で8Gバイト/sを目標に
RapidIOは,以下のような特徴を持ちます.
- 装置内のユニット間を接続することを当面のターゲットとしている.
- 複数のユニットの相互接続は,パケットのスイッチを行うRapidIOスイッチで実現される.
- CMOSチップで実現可能なLVDSインターフェースを最初の物理接続仕様としている.
- アクセス遅延はハードウェア・バス並み(60ns以上).
- エラー・ビット処理はハードウェアに任せる.
- 論理層としてハードウェア・アクセスを抽象化したレベルを扱う.
RapidIOはソフトウェア・レベルに深入りしない仕様で実現することを目標としています.RapidIOは,図11に示すように各種のサブシステム間をつなぐ技術であり,同じI/Oアクセスをサブシステム間で実現します.
RapidIOの仕様は次の3階層に分かれています(図12).
- 物理層:LVDS(Low Voltage Differential Signaling)による8ビット/16ビット接続およびシリアル接続(将来,新しい接続を追加可能)
- トランスポート層:パケット交換仕様
- 論理層:I/Oシステム,メッセージ・パッシング,グローバル共有メモリ
LVDS接続における転送クロックは最大1GHzであり,最大データ転送速度は8Gバイト/sを目標としています.
●FPGA用IPコアやポートを備えるプロセッサが登場
現在では具体的なハードウェアが登場してきています.FPGAベンダの米国Xilinx社はRapidIOのIPコアを提供しており,Motorola社はMPC8540プロセッサにRapidIOポートを搭載しています.また,複数のサブシステムをRapidIOで接続した,PowerPCプロセッサ搭載のネットワーク機器が登場してきました.ネットワーク機器はRapidIOを適用できる有効な分野の一つです.また,今後は高速にサブシステム間を結合する技術をもとにした高度な分散システムへの適用が広がっていくことでしょう(注4).
注4;米国QNX Software Systems社は,同社のリアルタイムOS上にRapidIOのリンク層を組み込んでいる.同社のリアルタイムOSの持つネットワーク透過分散機能,高信頼性付加機能と組み合わせて顧客に高信頼性,ネットワーク分散システム・ソリューションを提供することを目的としている.
おかざわ・こういち
QNXソフトウェアシステムズ(株)