高速インターフェース規格ガイド ――Serial ATA,3GIO,InfiniBandから10GビットEthernetまで
●MAC,伝送方式,伝送媒体を高速対応に1),2)
Ethernetのフレーム長(最小64バイト)は比較的短いので,伝送速度の向上と伝送距離の延長に伴って送信中に衝突検出を行うことが困難になります.また,衝突は実効的な伝送量の低下,送信完了までの遅延時間の増加を招きます.このことから,10GビットEthernetでは,CSM/CDを採用せず,フロー制御による全二重方式のみを利用しています.また,物理層にSONET(Synchronous Optical Network)フレーム変換を行うWSI(WAN Interface Sublayer)を新たに追加し,WAN接続を可能にしました.
伝送方式についても,4波長分割多重のWDM(wave length division multiplexing)を追加し,敷設済みのWDMファイバ網に接続できます.コード変換も,XGMII(10 Gigabit Media Independent Interface)に合わせて,64b/ 66bが新たに採用されました.伝送媒体は,ベースバンド方式による光ファイバだけを採用しています.これらの変更により,最大伝送距離はこれまでの5kmから40kmへと改善されました(表6).
●信頼性とLAN認識を改善へ
WANで用いられているSONET,SDH(synchronous digital hierarchy),ATM(asynchronous transfer mode)などは,高い信頼性と高速・長距離伝送を可能としていますが,非常に高価です.Ethernetは,異なる伝送速度においても互換性があり,処理が簡単で安価なことから,LANで広く採用されています.しかし,WANへの適用を考えた場合,以下のような問題があります.
- 物理層にループバック機能がなく,耐故障性の高いリング型ネットワークを構成できないので,信頼性が低い.
- WAN上でLANを認識するためのフィールドが12ビットと小さいので,最大でも4096のLANしか識別できない.
これらを解消するため,10GビットEthernetでは,以下の作業が進行中です.
- SONET並みの高速障害回避機能を実現するRPR(Resilient Packet Ring)のデータリンク層への適用(IEEE 802.17で審議中)
- ラベルによるLAN認識を可能にし,ネットワークの拡張性を容易にするEoMPLS(Ethernet over Multi Protocol Label Switching)の適用(IETF:Internet Engineering Task Forceで標準化作業中)
今後,10GビットEthernetは,MANを基軸にしたWANへの展開が期待されています.
参考・引用*文献
(1) 10Gigabit Ethernet Technology Overview White Paper,10Gigabit Ethernet Alliance.
(2) 石田修,「10Gigabit Ethernetの現状と将来展望」,第14回光通信システムシンポジウム,OCS/OPE/PNI 00-4S.
しおざわ・のぼる
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