低コスト・低消費電力のカーナビ・システムを構築するためのハード&ソフト設計 ――拡張性のあるプロセッサ・ベースの開発プラットホーム作り
● システムを構成するモジュールの役割
図2のシステムでは,電子地図の生のベクトル情報をCD-ROMに格納します.ほとんどの場合,1枚のCD-ROMに少なくとも欧州の一ヵ国分のベクトル情報を格納できます.ナビゲーション中にCD-ROMなどの光学デバイスに何度もアクセスすることを防ぐため,32MバイトのNAND型フラッシュ・メモリが用意されています.このフラッシュ・メモリには,計算した経路(corridorとも呼ばれる)を格納します.格納された経路は複数の分岐を備えています.ユーザが最初に用意されていた経路からそれても,この分岐情報を利用すれば,経路の再計算を行わなくてすみます.
目的地の入力には,汎用I/O(GPIO)またはPF(pro-grammable flag)ピン注2に接続されたキーパッドやサムホイール・スイッチを用います.また,目的地を音声入力で制御するには,オーディオCODECに接続されたマイクロホンを使用できます.この場合,システムに自動音声認識ソフトウェア・モジュールを搭載する必要があります.
ディスプレイは,進路変更ごとの情報または地図ベースの情報のいずれかを表示します.図2のシステムにおいて,ディスプレイは27MHzのクロックを必要とします.長いフラット・ワイヤ(パラレル)ケーブルを用いると,このクロックによって大きな電磁干渉(EMI:electro-magnetic interference)が発生します.そこで,図のシステムではLVDS(low voltage differential signaling)バッファを使って,EMC(electro magnetic compatibility;電磁環境適合性)の要件を満たしつつ,長いケーブルを使用できるようにしています.
渋滞の場合,ラジオからのRDS(radio data system)/ RDBS(radio data broadcasting system)またはTMC(traf-fic message channel)などのメッセージによって,ナビゲーションの方向を変更します.ユーザには,ナビゲーション中に音声メッセージ(オーディオCODECを介して)やラジオ・システム(SPORT送信ピンに接続されている)を利用してこうした変更が通知されます.
注2;このI/Oは割り込み入力として使用できる.