低コスト・低消費電力のカーナビ・システムを構築するためのハード&ソフト設計 ――拡張性のあるプロセッサ・ベースの開発プラットホーム作り
1.低価格帯カーナビのハードウェア構成
現在のナビゲーション・システムには,経路計算や音声ガイダンスのためのオーディオ・アルゴリズムなどのタスクを処理するDSP(ディジタル信号処理プロセッサ),GPSチップセットのタイミングと係数の更新といった標準的な制御タスクおよびGUIタスクを処理するマイクロコントローラが搭載されています.
最近では,DSPとマイクロコントローラの機能を1チップに集積したデバイスを用いるケースもあります.このようなデバイスの一つとして,米国Analog Devices社のBlackfinプロセッサがあります.このプロセッサは,動 作周波数が最大600MHzで1サイクル当たり二つの積和演算(16ビット)を同時に実行します(図1).また,PPI(parallel peripheral interface),SPORT(シリアル・ポート),外部パラレル・インターフェースなどの高帯域なインターフェースを備えています.DSPとしての機能はマイクロコントローラに組み込まれており,RISCプロセッサのプログラミング・モデルを利用しています.16ビットと32ビットの可変長命令により,コード密度が改善されるだけでなく,処理機能と並列してロード/ストア命令を発行することができます.
ここでは,このデバイスを用いたカー・ナビゲーション・システムのプラットホーム基板の開発例を紹介します(コラム「低価格帯カーナビのリファレンス設計」を参照).
図1 DSPとマイクロコントローラを1チップに集積
Analog Devices社のBlackfinプロセッサのコア・アーキテクチャを示す.二つの積和演算ユニットや四つのビデオALUなどのDSP的なアーキテクチャに加え,SP(スタック・ポインタ)/FP(フレーム・ポインタ)などのRISC的なアーキテクチャも採用している.外部インターフェースとして,TWI(two-wire serialinterface ;I2C互換)やCAN(controller area network),SPI(serial peripheral interface),UARTなどに対応している.