干渉を起こさない2.4GHz帯ワイヤレス通信を実現する ――ノイズ発生のメカニズムとDS-SSスペクトラム拡散方式による干渉の回避
● 周波数ホッピングで信号の衝突を避けるBluetooth
別の干渉発生源としてBluetoothシステムが挙げられ ます.Bluetoothは,スペクトラム拡散方式としてFH-SS(frequency hopping spectrum spread;周波数ホッピング方式)を採用しています.これは,Bluetoothシステムとそれに関連するすべてのノードが625μsごとに,2.4GHz帯で利用可能な83MHz内の79チャネルの一つに周波数を変化させるということです.
図3(a)は,500ms間のBluetoothシステムの動作を示します.一方,図3(b)は同じBluetoothシステムについて,5s間にわたる動作を示しています.周波数ホッピングの理論では,2.4GHz帯を使用する別のシステムが存在する場合,あるシステムがそれらのシステムと衝突するのは数パーセントの時間だけで,残りの時間は「静かな(使用されていない)」チャネルを見つけて動作を続けます.別のシステムが周波数ホッピングを採用していなければ,Bluetoothシステムがその別のシステムの周波数と重なるのは79回のホッピングに1回だけで,その後,すぐに別の周波数にホッピングしていきます(図4).つまり,このような場合,ほとんどの時間はBluetoothシステムが別のRFシステムに影響を与えることはないといえます.
図3 Bluetoothシステムの周波数スペクトラム
(a)は,ホストと通信中のBluetoothデバイスを示している.掃引時間は500ms.Bluetoothは,任意のある時点において1MHzのRFチャネルを使用し,毎秒1,600回ずつチャネル間をホッピングする.(b)の波形は,(a)と同じBluetoothデバイスのものである.掃引時間は5sであり,Bluetoothが2.4GHz帯のバンド内ですべてのチャネルを使用していることがわかる.つまり,Bluetoothの場合,バンド内で動作している2.4GHz帯を使用するどのデバイスに対しても信号が衝突し,再送信を行わせる原因になる可能性が高い.
図4 周波数ホッピング
あるRFシステムが周波数ホッピングを採用していなければ,Bluetoothシステムがそのシステムの周波数と重なるのは79回のホッピングのうち1回だけで,その後,すぐに別の周波数にホッピングしていく.