干渉を起こさない2.4GHz帯ワイヤレス通信を実現する ――ノイズ発生のメカニズムとDS-SSスペクトラム拡散方式による干渉の回避
● 堅ろう性とデータ・レートのトレードオフ
当然,こうしたハードウェアによる手法にはトレードオフがあります.そのトレードオフとはデータ・レートです.1Mbpsのシンボル・レートを用いて1ビット当たり64チップのデータを送信する無線装置では,最大データ・レートは約16kbps(=1Mbps÷64)になります.システムによっては,高い堅ろう性(チップ数が多い)が要求される場合もありますが,高速なデータ・レート(チップ数が少ない)が望ましい場合もあります.そのため,ビット当たりのチップ数を設定できる無線システムでは,利用できるデータ・レートを考慮して設計することが重要です.
DS-SS以外の手法で高いデータ・レートの達成をうたっているものもありますが,そうした手法の中にはデータ・パケットを頻繁に再送信することで最大データ・レートに影響を与えているものもあります.また,DS-SSを用いないシステムは,多くの場合,前方エラー訂正(FEC:forward error correction)注を利用してビット・エラーを起こしにくくしています.この方法では,重複データやチェック・ビットといった冗長データを組み込んで送信するため,実際のデータのスループットが最大66%低減することもあります.
注;送信側でエラー制御用のデータを送信データに入れておき,受信側でエラーの訂正や検出を行う方法.