つながるワイヤレス通信機器の開発手法(16) ――デバッグを行う
シナリオを作成する場合,図5のパターンだけでなく,例えば,それぞれの失敗が3回以上のときにどうなるのか,ページング受信が永遠に失敗したときはどうなるのか,周波数情報受信が永遠に失敗したときはどうなるのか,ページング・レスポンス受信に失敗したときはどうなるのか,といった場合も想定する必要がある.
多くのシナリオを用意して抜けや漏れを少なくし,かつ,次に説明するソフトウェア・エンコーダとの親和性を良くするため,シナリオを簡易的に表すフォーマット(簡易スクリプト)を用意するとよい.例えば,図5を表すための簡易スクリプト構文は以下のようになる.
Send_Page(source, destination, error)
Send_Page_res(source, destination, error)
Send_Finf(source, destination, error)
Send_Finf_res(source, destination, error)
Send_Page,Send_Page_res,Send_Finf,Send_Finf_ resは,それぞれページング・メッセージ,ページング・レスポンス・メッセージ,周波数情報メッセージ,レスポンス・メッセージを送信することを示している.かっこの中には送信側の局の名まえ(source),受信側の局の名まえ(destination),送信データのエラーの有無(error)を入れる(エラーがある場合は'1',ない場合は'0').例えば,図5(a)のシーケンスを簡易スクリプトで表すと次のようになる.
Send_Page(A,B,0) (1)
Send_Page_res(B,A,0) (2)
Send_Finf(A,B,0) (3)
Send_Finf_res(B,A,0) (4)
(1)はA局からB局にエラーを含まないページング・メッセージを送信していることを表している.(2)はB局からA局にエラーを含まないページング・レスポンス・メッセージを送信していることを,(3)はA局からB局にエラーを含まない周波数情報メッセージを送信していることを示している.そして,(4)はB局からA局にエラーを含まないレスポンス・メッセージを送信することを表している.
同じ手順で,図5(b)の簡易スクリプトを作成すると以下のようになる.
図5(b)の簡易スクリプト
Send_Page(A,B,1) ←エラーあり
Send_Page(A,B,1) ←エラーあり
Send_Page(A,B,0)
Send_Page_res(B,A,0)
Send_Finf(A,B,0)
Send_Finf_res(B,A,0)