つながるワイヤレス通信機器の開発手法(9) ――開発・検証環境を整備する
●システム・シミュレータを検証にも利用する
検証する回路の動作を確認するためには,ディジタル回路(図6(a)の被検証回路)のみでシミュレーションするのではなく,送信側や電波伝搬路,RF回路,アナログ回路を通った信号を入力として,被検証回路が正常に動作するかどうかを確認する必要がある(図6(a)).しかし,このような動作確認は,通常,LSIとソフトウェア,そして回路がすべてでき上がってからでないと実現できない.
そこで,このような場合はロジック・アナライザを使ってシミュレーションと実機の橋渡しを行う方法が利用される.例えば,まずA-Dコンバータ内蔵のロジック・アナライザでRF回路,アナログ回路の出力信号を取り込む.その後,シミュレーション用にデータ変換してHDLシミュレータなどに入力し,被検証回路の動作を検証する(図6(b)).また,ロジック・アナライザで実機から取り込んだパターンを与えて,被検証回路の動作を検証することも可能である(図6(c)).シミュレータと実機の両方に対して同じ入力信号を用いるので,でき上がった回路の動作がシミュレーション結果と一致しているかどうかを確認しやすい.
ロジック・アナライザでこれらのデータ収集を行う場合,被検証回路のシステム・クロック,もしくは実際に使われるA-Dコンバータのサンプリング周波数を利用するとよい.例えば,IEEE 802.11bのモデム回路(ベースバンド・プロセッサ)は,データ転送速度(11Mbps)の2倍である22Mサンプル/sでサンプリングするA-Dコンバータを持っている場合が多い.
図6 検証方法
ワイヤレス通信機器の検証では,送信側や電波伝搬路,RF回路,アナログ回路を通った信号を入力して,被検証回路が正常に動作するかどうかを確認する必要がある.