つながるワイヤレス通信機器の開発手法(9) ――開発・検証環境を整備する
2)バグ情報管理
チームで設計業務を進めているとき,バグ情報を共有し,複数の設計者が協力してデバッグを行うことがある.このような場合,バグを発見した設計者がその状況について正確,かつ,詳細にレポートを作成し,その部分の担当者がバグを修正していく.このプロセスを関係する設計者とその管理者に正確に伝え,個々のバグに対して現在のステータスを明示するツールが市販されている.
ここでは米国Synchronicity社のバグ情報管理ツール「ProjectSync」を使った場合の手順を紹介する.バグが見つかったら,発見者はその重要度とバグ修正担当者名をProjectSyncのデータベースに書き込む(この行動は「欠陥を公開する」と言う).書き込まれたレポートは,関係者にメールで通知される.指名を受けた修正担当者はバグを修正し,修正が終了したことをデータベースに書き込む.修正が終了するとメールで通知され,バグ発見者はうまく修正されたかどうかを検証する.修正が完了したことを確認したら,そのことをデータベースに書き込む.このようなプロセスを,Webサイトの閲覧とメール通知を組み合わせて実行するので,タイムリで正確なデバッグを行える.
このデータベースをもとに,設計データのリリース可能時期を見積もったり,リリース前にバグ情報をチェックしてリリース・ノートを作成することもできる.また,バグの修正やその確認があいまいなままではデータベースに入力することができないので,バグ情報管理ツールを使い続けることで,「発見→修正→確認」の作業がスムーズに進むようになる.
ProjectSyncを同社のリビジョン管理ツール「DesignSync」と組み合わせて利用すると,「どのリビジョンでどのような不ぐあいが生じたか」,「どのリビジョンでバグが修正され,検証されたか」といった記録が残り,そのつど関係者にメールで通知される.
筆者は日本の1ヵ所と米国の2ヵ所の設計拠点をVPN(virtual private network)で結び,DesignSyncとProjectSyncを使って製品開発を行ったことがある.これらのツールはよくできており,修正のまちがいや修正済みのソースの消去といったトラブルは皆無であった.また,ProjectSyncも設計プロジェクトの進捗状況を管理するのに優れたツールであったという印象を持っている.