車載LANと42V電源系の動向 ――高性能化,高機能化が求められる車載機器の開発
2.電子化がもたらす新たな課題
カー・エレクトロニクスが進歩すると,
- 故障
- 違法改造された無線機による強力なノイズ
- 人為的な操作ミス
- 製造欠陥などによる誤動作
によって事故が発生することがあります.このような事故を未然に防ぐため,自動車メーカや車載機器メーカはさまざまな取り組みを行っています.
また,多くの場合,低価格で調達できて故障率が少ない汎用の部品を選択しているものの,システムの機能を左右する「キー・パーツ」については,システムごとに最適な回路構成をとったカスタム品を開発して信頼性を向上させています.特に,ブレーキやエア・バッグなど,故障が発生した場合に直接人命にかかわる事故につながる機能については,システムを2重化して制御しています.このように,信頼性を向上させるための車載機器設計の手法はシステムごとに異なります(図4).
一般的に,信頼性を考慮したシステムは3種類に分類されます(表1).まず,アクセサリ的な制御を行う車載機器では,マイコン内で実施できる簡単な診断処理を行います(図4(a)).この手法では,最悪の場合,機器が誤動作する可能性も残されています.一方,メカ制御を行う車載機器では,外部に監視回路を設けてマイコンを動作させ,システムが誤動作したときにマイコンの動作を停止できるような構成をとっています(図4(b)).また,人命にかかわる車載機器では,制御用マイコンと監視用マイコンを用意して,すべての制御が正常に行われているかどうかを監視し,正常でない場合にはシステムを停止できるような構成としています(図4(c)).
〔図4〕信頼性を考慮したシステム構成
(a)はアクセサリ的な制御を行うシステムに,(b)は機械的な制御を行うシステムに,(c)は特に人命にかかわるシステムに採用される.
〔表1〕車載機器の分類
分 類
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適用例
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アクセサリ的な制御を行う車載機器 | キー・オートロック制御,サンルーフ開閉制御,座席制御,室内灯制御 |
メカ制御を行う車載機器 | エンジン制御,トランスミッション制御,ABS,油圧パワー・ステアリング制御,電気自動車用のモータ制御 |
人命にかかわる車載機器 | 電動ブレーキ制御(brake-by-wire:油圧をなくしてLAN化した製品),アクセル制御(アクセル・ワイヤをLAN化した製品),電動パワー・ステアリング制御 |