車載LANと42V電源系の動向 ――高性能化,高機能化が求められる車載機器の開発
現在,自動車に搭載されている車載LANプロトコルの多くは,欧州を中心に規格化されたCAN(Controller Area Network)を代表とする制御系車載LANです.車載LANプロトコルは,次の四つに分類することができます.
1)ボディ系:ドアの開閉,各種スイッチ類およびライトの点灯など,応答スピードを要求しないもの
- 低速LAN(125kbps以下)
- 非同期データ通信
- 低コスト
2)パワートレイン(制御)系:エンジン,トランスミッション,ブレーキなどのメカを制御するもの
- 中速LAN(数百kbps~1Mbps程度)
- 非同期データ通信
- 高信頼性
3)安全重視用途の制御系:ブレーキの4輪協調制御,アクセル情報の電子化など,故障すると人命にかかわるもの
- 高速LAN(数M~数十Mbps)
- 非同期データ通信
- 光通信による高信頼性の追求
4)情報系:インターネット情報および映像情報を双方向通信する用途
- 高速LAN(数M~100Mbps)
- リアルタイム・データ通信
- 無線および光通信による高速化の追求(信頼性はそれほど高くない)
次世代LANを応用したシステム例としては,図7に示すような構成が挙げられます.自動車に搭載された各種スイッチ類とエンジンに代表されるメカ制御装置をLANで接続することで,搭乗者の複合的な要求を予測しつつ最小の操作で制御可能となります.また,通信プロトコルを業界標準とすることで,必要に応じて最適な車載機器を世界中のどこからでも調達できる状況を実現します.これは,各自動車メーカが独自のプロトコルを使用していたときとは異なり,自動車メーカの製品開発期間を短縮できる可能性も含んでいます.
〔図7〕次世代LANを応用したシステム例
自動車に搭載された各種スイッチ類とエンジンに代表されるメカ制御装置をLANで接続する.これによって,搭乗者の複合的な要求を予測しつつ最小の操作のみで制御することが可能となる.