トヨタなど数社がミリ波レーダを用いた衝突防止システムを展示 ――第37回 東京モーターショー 2003

組み込みネット編集部

tag: 組み込み

レポート 2003年11月27日

 2003年10月24日~11月5日,幕張メッセ(千葉県千葉市)にて乗用車・二輪車に関する展示会「第37回 東京モーターショー 2003」が開催された(写真1).乗員の安全性の向上や環境対策に関する展示が数多く見られた.例えばトヨタ自動車は,コンセプト・カーとして対向車や路上の障害物をミリ波レーダによって検知し,ブレーキングなどを制御するプリクラッシュ・セーフティ・システムに対応した「CROWN CONCEPT」を展示した.

p_01.jpg
[写真1] 第37回 東京モーターショー 2003
最終日の11月5日は平日にもかかわらず多くの人が来場していた.入場者数の累計は1,420,400人.

●ミリ波レーダを利用した安全システム

 エアバッグなど,事故が起きた際の安全性を確保する技術は確立されつつある.しかし,最近では「事故を起こさないための技術」に注目が集まっている.展示会場では,ミリ波レーダを用いて障害物を検知し,ブレーキングやシートベルトのたるみを制御する「プリクラッシュ・セーフティ・システム」についての展示があちらこちらで行われていた.

 現在,実用化されているレーザ光を使ったレーダは,ミリ波レーダと比べて検知距離が伸びない.また,天候の影響を受けやすいため,悪天候時の車両検出特性が低下する.一方,ミリ波レーダは天候の影響が少ないものの,木片や布などを間に入ると正しく検知できない場合がある.

 トヨタ自動車は,上述の安全システムを搭載したコンセプト・カー「CROWN CONCEPT」を展示した(写真2).本システムは,ミリ波レーダが路上にある障害物を認識し,衝突する危険性の度合いによって,ブザーなどによる運転手への危険の通知,ブレーキキングの制御,シートベルトの巻き取りなどを行う.

 フロント・グリル(左右のヘッド・ライトの中間)にミリ波レーダを設置した.ミリ波レーダは自社製.すでに,同社の「ハリアー」と「セルシオ」にはオプションで本システムが搭載されている.価格は50万円(ハリアーの場合のオプション価格.レーダ・クルーズ・コントロール,運転席と助手席のSRSサイド・エアバッグ,前後席のSRSカーテン・シールド・エアバッグを含む).

p_02.jpg
[写真2] ミリ波レーダを搭載したCROWN CONCEPT
トヨタ自動車のコンセプト・カー.ミリ波レーダを搭載しているため,エンブレムの部分が平らになっている.

 また,デンソーのブースでは,ミリ波レーダとプリクラッシュ・セーフティ用の各種ECU(電子制御ユニット)が展示されていた(写真3).同社は,中心から±10°の範囲を検知できるミリ波レーダを開発した.同レーダの検知距離は150m,検知可能な相対速度は±200km/h.

 ミリ波レーダやレーダからの信号の受信についての技術的な課題はそれほどないという.しかし,自動車メーカによって異なる危険度の判定基準のすべてに対応することや,その基準に合わせて適切にブレーキングやシートベルトの制御を行うことは容易ではない.本機器の出荷開始時期は未定.

p_03a.jpg
(a) ミリ波レーダ


p_03b.jpg
(b) プリクラッシュ・シートベルトECU

[写真3] デンソーのミリ波レーダとECU
デンソーが開発したミリ波レーダとプリクラッシュ・シートベルトECU.

 三菱電機も同様にミリ波レーダを展示していた(写真4).ミリ波レーダにはいくつかの方式があるが,同社が採用したのはFM-パルス・ドップラー・レーダ方式である.この方式は複数の車両に対する認識率が高いという特徴がある.

 本レーダの検知距離は150m.中心から±4°の範囲で検知可能.周波数帯は76.5GHz.

p_04.jpg
[写真4] 三菱電機のミリ波レーダ
FM-パルス・ドップラー・レーダ方式を採用.現在,開発中.

●燃料電池車とCO2冷媒を利用したカー・エアコンで地球温暖化を防止

 京都議定書の採択によってCO2などの温室効果ガスの排出量を抑えることが課題となっている.同議定書によると,2008年~2012年に本議定書を採択した先進国は1990年の排出量の5%に相当する量を削減する.国によって削減量は異なるが,日本は6%減を目標としている.

 こうした中,燃料電池自動車の開発が進んでいる.燃料電池自動車は,水素と酸素の化学反応によって電気を生成し,それによりモータを駆動させて自動車を走行させる.化学反応によって発生するのは電気と水だけであり,CO2などは排出されない.すでに公道でのテスト走行が始まっている.気温が氷点下のときの信頼性や航続距離など,改善が必要な課題はある.また,現在,日本全国にガス・ステーションが6ヵ所(東京・横浜に4ヵ所,大阪に1ヵ所,高知に1ヵ所)しかなく,インフラの整備も進んでいない.

 ダイハツのブースでは,2003年2月から公道において走行テストを行っている燃料電池自動車「MOVE FCV-K-2」が展示されていた(写真5).本燃料電池自動車はトヨタ自動車と共同で開発した.燃料電池として,トヨタ自動車の軽自動車用の「トヨタFCスタック」を利用している.本燃料電池の最大出力は30kWとしている.2次電池にはニッケル水素電池を使っている.モータの最大出力は32kW,最大トルクは65N・m.航続距離は120kmである.

p_05a.jpg
(a) MOVE FCV-K-2


p_05b.jpg
(b) 排水口
[写真5] MOVE FCV-K-2
現在,同社のテスト・ドライバによって公道におけるテスト走行を行っている.自動車の後部にはマフラと同じような形状の排水口があり,燃料電池自動車の場合はここから水が排出される.

 また,トヨタ自動車は同社の燃料電池自動車「FCHV」のスケルトン・モデルを展示した(写真6).本燃料電池自動車は,すでに日本と米国で限定出荷を開始している.

 燃料電池は乗用車用の「トヨタFCスタック」を採用している.最大出力は90kW.モータの最大出力は80kW,最大トルクは260N・m.航続距離は300kmである.

p_06.jpg
[写真6] トヨタFCHV
スケルトン・モデルを展示.内部の構造などが見える.

 一方,デンソーはCO2を冷媒に使用したカー・エアコン・システムの展示を行った(写真7).オゾン層の破壊や地球温暖化への影響が大きい特定フロン(R12)に代わって,現在,カー・エアコンの冷媒としては主に代替フロン(R134a)が使用されている.R134aはオゾン層破壊係数は小さいものの,地球温暖化係数(地球温暖化への影響を示す値)は大きい.今回採用したCO2は自然冷媒(自然界に存在する物質)であり,地球温暖化係数がR134aの1/1300であるという.

 展示されたシステムは,室外器,アキュムレータ・タンク,内部熱交換器,圧縮機(コンプレッサ),熱交換器(エバポレータ),室内ガス・クーラなどで構成されていた.なお,このCO2を冷媒にしたカー・エアコン・システムは,トヨタ自動車の燃料電池自動車「FCVH」に搭載されているという.

p_07.jpg
[写真7] CO2冷媒を採用したカー・エアコン・システム
左側の板が室外器,その右隣にあるのは上からアキュムレータ・タンク(同じ位置に内部熱交換器),コンプレッサ,バイパス管である.いちばん右側は上から熱交換器,室内ガス・クーラ.

組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日