車載LANと42V電源系の動向 ――高性能化,高機能化が求められる車載機器の開発

佐藤由和

tag: 組み込み

技術解説 2002年12月26日

4.トレンドは「42V化」と「車載LAN」

 これまでは,一般にエンジンを始動させるために最低限必要な電圧(小型車は12V系,大型車は24V系)が使用されてきました.近年,エレクトロニクスを多用することで,自動車で消費される電流が増大しており,この消費電流を12V系の電源でまかなうことは難しくなってきています.このような背景から,消費電流の多い高級車から電流容量の大きい42V系へ逐次移行が進んでいます.特に最近では,自動車に100V電源コンセントがつけられるようになり,電力消費量は増大の一途をたどっています.

●42V化による恩恵

 42V系は,12V系のバッテリを3個直列に接続したものです.正常なバッテリは14V程度の電圧が出力されるため,14V×3=42Vとなりました.

 自動車に搭載されたエアコンやパワー・ステアリングなどの機器を制御するためには,100V以上の電圧がないと十分な出力が得られず,損失が大きいという課題が残されています.このため,電気自動車では200V以上の電圧を使用した制御が検討されています.ただし,車両事故発生時に200V以上の電圧が直接人体へ触れると,人体に大きなダメージが及び,最悪の場合人命にかかわる可能性があるため,電源設計時には十分な注意が必要となります.

 一方,エンジンを動力源として使用する自動車では,電圧による人体へのダメージが少ない42V電圧を選択しています.バッテリを42Vにすると,エンジン始動時の負荷が増大するため12Vのバッテリだけでは難しかったISG(Integrated Starter Generator)注5 の導入が可能となります.ISGを用いると,渋滞や信号待ちでエンジンをストップさせても,スムーズにスタートできる機能(いわゆる「アイドル・ストップ」)を実現することが容易になります.

 このほか,安全や環境対策,乗りごこちの良さを追求するために導入されるライト制御,電動ステアリング,電動ブレーキ,アクティブ・ロール制御,触媒ヒータ,電動エンジン・バルブなどで必要となる電圧や電流を確保しやすくしています.図5にボディ系で検討が進んでいる車載機器の搭載予想ブロック図を示します.複数のモータを各種のスイッチ操作で動作させることが検討されており,バッテリにかかる負荷は計り知れないものとなってきています.

 注5;スタータ(エンジンの始動時に回転するモータ)とオルタネータ(交流発電機)を統合したもの.

f05_01.gif
〔図5〕バッテリの負担は増加の一途
ボディ系の制御では,複数のモータを各種のスイッチ操作で動作させることが検討されており,バッテリにかかる負荷は計り知れないものとなってきている.

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