携帯機器間のデータ転送を簡単かつ高速に ――既存USBの課題を克服するための追加規格
3.スレーブがホストになるために プロトコルを拡張
OTG 1.0では,コネクタなどの変更よりも,プロトコルの拡張のほうが重要であると言えます.これから説明するプロトコルの拡張によって,一つの機器にホストと周辺機器の機能を持たせています.また,従来のUSBより消費電力を節約できるようになりました.
●デュアルロール・デバイスのホストとしての機能
デュアルロール・デバイスは,USB 2.0規格に準拠していなければならないのはもちろんです.そのほかにも,
- 一つのMini-ABレセプタクルを装備
- セッション開始要求手順(SRP)に対応
- ホスト交換手順(HNP)に対応
などの機能を備えていなければなりません.USBの機能のほかに,ユーザに情報を伝える手段も持たなければなりません.
OTG 1.0対応のデュアルロール・デバイスは,ホストの機能を要求されますが,USB規格のホストの仕様を完全にサポートする必要はありません.例えば,デュアルロール・デバイスはホストとしては,フルスピード・モード(12Mbps)だけをサポートする必要があります.ロースピード(1.5Mbps)とハイスピード(480Mbps)はオプションになります.
また,ホストがパソコンの場合のように,ありとあらゆる機器をサポートするためのデバイス・ドライバのインストール手段を用意する必要はありません.「Targeted Peripheral List」という,どのような周辺機器をサポートするかの一覧が付いていればよいのです.
標準ホストには100mAまたは500mAの電流供給が必須ですが,デュアルロール・デバイスでは,ホストとして8mAだけをVBUSに供給すればよいのです.