新人研修は「模型ロケット」《指導者・管理者編》 ――実験的新入社員研修の舞台裏(SWEST Survayor-Hamana-2)
●管理者から新入社員に向けて「喝」
ある日の試射で事件は起こりました.当日は本番のペイロードと同じ重量の重りを載せた打ち上げ試験を行う計画でした.しかし,結果としてロケットをロストしてしまいました.試験機はたった1機で,しかも市販品ではありますが米国製の機体であるため,国内では入手が困難でした.打ち上げた模型ロケットはやぶの深い場所に入ってしまい,探索は中止.代替の機体の入手は難しく,ここにきて機体の変更が頭をちらつきました.しかし,機体変更となるとこれまで蓄積してきた飛行データの意味がなくなり,データを取得し直さなければなりません.この事件で,プロジェクトは非常に厳しい状況に追い込まれました(写真2).
このロストの後,管理者から新入社員に向けて「喝」が入れられました.彼らも真剣に,このHamana-2のプロジェクトに気持ちを向けられるようになったようです.
写真2 当初は打ち上げの後でバーベキューをやる余裕すらあったのだが...
●組み込み開発の縮図を体現
8月に入るころには,このプロジェクトがすでに業務なのか私事なのか区別がつかない状況になってしまったのが,筆者らのいちばんの反省点です.土日の早朝に打ち上げるだけでは間に合わず,業務開始前の6時に試射場に集合して打ち上げ準備,試射,片付けを終え,8時に撤収.そしてそのまま出社と,普通では認められないような方法で開発を進めてしまいました.「自己啓発の活動」と言いながら作業を進めましたが,新入社員たちが表立ってもんくも言わず,危機感を持って活動に参加してくれた点は評価に値すると考えています.ただし,時間度外視で進めさせてしまった責任は少なからず管理者サイドにあり,この点については今後の研修に対する筆者らの課題です.