組み込みソフトウェア開発の効率の良い学びかた ――組込みスキル標準(ETSS)からコーチングまで
● 習うより慣れろ
不安を打ち払いたければ,しごとに慣れればよいのです.筆者の当時のしごとは,アセンブリ言語でプログラムを書き,実機でデバッグすることでした.読んだことのなかった英語のCPUマニュアルを読み,アセンブリ言語を勉強し,使ったことがなかったミニ・コンピュータ(エンジニアリング計算などに使う小型コンピュータ)のコンソールを使い,存在すら知らなかったROMライタでROMを焼きました.
すべてが試行錯誤でした.勉強しようと思っても,教科書なんてありません.ただひたすら,先輩の書いた謎めいたアセンブリ・コードを読み,朝から夜までしごとに明け暮れていました.すっかりプログラムを暗記し,頭の中で必死にデバッグしていました.
「あぁ,きょうも動かなかった」.落胆して帰宅する途中,駅のロータリを横切ろうとしたときに頭の中で急にバグを発見しました.お風呂に入っているときに,頭の中でもっとコンパクトな(少メモリ容量の)実装方法を見つけました.今でも,そのときの感動をきのうのことのように思い出します.楽しかったです.ほんとうに,楽しい日々でした.きのうまでできなかったことが,きょうはできるようになっている.しごとは,ほんとうに楽しい!
筆者は,すっかりりっぱな6801(米国Motorola社が開発した8ビット・マイコン)のアセンブリ・プログラマになっていました.知らないうちに,しごとへの不安感は薄れていきました.