組み込みソフトウェア開発の効率の良い学びかた ――組込みスキル標準(ETSS)からコーチングまで
4 セルフコーチング
スキル基準による"見える"化により,ずいぶんと勉強の見通しが良くなったと思います.しかし問題は,あなたがやる気になって勉強を継続できるか否かです.あなたは,みずから進んでスキルの位置づけを行えますか? どうしたら,モチベーションを維持して勉強を続けることができると思いますか?
コーチングがそれに対する一つの答えです.コーチングの世界をのぞいてみましょう.
● コーチング vs. ティーチング
コーチングはティーチングとまったく異なります.ティーチングは教え込む教育手法であり,コーチングは能力を引き出す教育手法です.
"ティーチャ"と"コーチ"と言えば,イメージしていただけると思います(p.28のコラム「コーチの語源」を参照).筆者の子どものころ,教科書片手に一段高い教壇から生徒を見下ろして教えるこわもての中学校の先生(ティーチャ)がいました.会社に入ってからは,つたない筆者のプログラミングを励ましながら見守ってくれた先輩(コーチ)がいました.
このコーチングですが,最近では典型的ティーチャである小中学校の先生も盛んに学んでいます.優れた先生の授業では,単に教科書を読ませるだけではなく,生徒の発言を引き出し,生徒の小さな"気づき"に的確に対応し,生徒に深く理解させる授業が行われています.そこで行われている手法が,まさにコーチングです.今,志の高い小中学校の先生は,独自に勉強会に参加し,コーチングを学んでいるそうです.
● やる気に火をつける
ではなぜ,今,コーチングが盛んになっているのでしょう.一つの理由は,コーチングにより本人のやる気に火をつけることができるからです.勉強では,自主性がもっともたいせつです.くじけそうになったときでもコーチングを適切に行えば,やる気を燃やし続けることができるのです.
現代は,やる気があるふりをする人はたくさんいます.しかし,本物のやる気を持続できる人は少ないのではないかと思います.だからこそ,いつも本気で困難に立ち向かう,プロフェッショナルのしごとをする人物の生きかたに触れたり,歯を食いしばって練習するオリンピック選手の記録番組を見たりすると,感動するのではないでしょうか.
皆さんは,みずから進んで組み込みソフトウェアの勉強をしようとしているのです.皆さんは,その気持ちを本物にして,やる気を持続していきたいと願っています.優れたコーチがいてくれれば,やり遂げることができるはずです.
しかし,自分の能力を引き出し,やる気に火をつけてくれる優れたコーチはどこにいるのでしょう.