組み込みソフトウェア開発の効率の良い学びかた ――組込みスキル標準(ETSS)からコーチングまで
組企業の経営者や事業責任者は,実際に自身で組み込みソフトウェアの勉強を行うわけではありません.ですから,教育を受ける当事者の視点で考えることはできません.勉強するのは,事業責任者ではなく皆さんです.皆さんの目線で考える必要があります.
では,経営者が教育のための時間を確保するように指示すれば,組み込みソフトウェア技術者教育が着実に行われるようになるのでしょうか.ひょっとしたら,時間の不足以外にも隠された原因があり,時間が十分にあっても企業教育は進展しないのではないでしょうか.問題の本質に迫るためには,等身大の自分の問題として,開発現場の目線で考えることが必要です.事件(!?)は会議室で起こっているのではなく,開発現場で起こっているのです.産業や企業の視点ではなく,あなた自身の視点で考えてみましょう.
● 何を勉強すればよいのかわからない自分に気づく
かりに自分がフリーランスの(特定の会社に属さない)組み込み技術者である,と考えてみてください.フリーランスの技術者であるあなたは,経営者であり事業責任者でもあります.そのうえで,図4で示した企業に対するアンケート項目にあなた自身が答えてください.もちろん自分を高く売り込むために知識獲得とスキル向上が必要ですから,勉強する時間はかならずねん出することでしょう(あなたがいちばん勉強していたころのことを思い出して!).
いかがでしょう.勉強を行う際の課題はなく,どんどん勉強している自分をイメージできましたか? それとも,時間以外の課題に気がつきましたか?
実は,多くの方は,組み込みソフトウェアについて勉強しようと考えたとき,何を勉強すればよいのかわからない自分に気づき,がく然とします.教えてくれる人がいない,という課題を思いついた方も,実際には何を勉強するかは教える人任せで,自分では深く考えていない方が多いのではないでしょうか.
このように,「組み込みソフトウェア技術者として,何を勉強していけばよいのかわからない」ということが,組み込みソフトウェア技術者教育のもっとも根源的な問題になっています.