民生用LSIへの搭載を想定した低コストの1回書き込み型メモリ・コアを開発 ――オンチップOTPROM、セキュリティ、アナログ・トリミングなどに利用可能
● 従来型の不揮発メモリと比較する
XPMとそのほかの不揮発メモリ(ROM,EPROM,フラッシュ・メモリ)の比較を表1に示します.
1)ROMとの比較
ROMには,サイズが小さく消費電力が少ない,標準のCMOSプロセスで実装できるといった利点があります.ROMはプロセス・ノードの縮小に容易に対応できます.そのため,新しいプロセスが利用可能になると,直ちにROMを使用できます.
ROMをチップ上の不揮発メモリとして見たときの最大の問題は,マスク・プログラム方式であり,チップ製造時に構成が固定されることです.ROMコアのいずれの情報も「ロック」されているので,フォトマスクを変更してもう一度製造ラインを稼働させないかぎり,情報を変更することはできません.
今日のLSIには開発期間の短縮が要求されており,フィールド・プログラマブル(ユーザの手元でプログラム可能)でないと,こうした要求にはこたえられません.民生用LSIの機能は頻繁に更新され,ときには3カ月おきに変わることもあります.市場の要求はデバイスを製造するたびに変化するかもしれません.
ここで,プロセッサのファームウェアがROMに格納される例を考えてみましょう.システムLSIの一般的な設計フローでは,ファームウェアの開発工程がプロジェクト全体のボトルネックになっています.LSIのハードウェアの設計が終わる前に,ファームウェアの開発が完了することはありません.これは,通常,1枚または複数枚のマスクに対して,少なくとも1回の再設計が必要になるということであり,新しいマスクを使ってLSIを製造するための余分な時間も必要になるということも意味します.
ファームウェアの修正によってマスクROMの内容が変わるたびに開発費(NRE:non-recurring
expenses)が必要になります.これは,今日主流のプロセスにおいては多大な負担であり,プロセス・ノードが縮小するたびに経費の金額がはね上がります.また,今日の大規模な半導体工場では,マスクを変更するたびに2~3ヵ月を超える製造期間が必要になります.加えて,マスクROMを搭載したチップの場合,チップのバージョンごとに異なるROM(例えば,各種の機能の組み合わせや異なるファームウェアを格納)が必要になり,これらの在庫を管理するため,実質的にチップのコストが増大します.
表1 XPMとそのほかの不揮発メモリ技術
こちらをクリックして拡大してご覧ください。