民生用LSIへの搭載を想定した低コストの1回書き込み型メモリ・コアを開発 ――オンチップOTPROM、セキュリティ、アナログ・トリミングなどに利用可能
● 民生用では安価な不揮発メモリ・コアが求められる
システムLSIに組み込まれるメモリ・コアの一部は不揮発性です.つまり,メモリ・コアに格納された情報はチップの電源がOFFになってもそのまま保持されます.SRAMコアや,その後現れたサイズの小さいDRAMコアの技術は,不揮発メモリ・コアと比べて歴史は長いものの,電源がOFFになると格納された情報が失われるという問題があります.このため,チップの電源がOFFになっても情報が保持され続けなければならないプログラムやデータ,ユーザ情報の格納という目的にSRAMコアやDRAMコアを利用することはできません.
単体のメモリLSIとしてEPROM(erasable and pro- grammable read only memory)が1980年代後半に登場しました.これは消去可能,かつプログラム可能であることから,情報を何度でも書き換えることができました.このデバイスは,チップ・パッケージ上の石英ガラスの消去窓からUV(紫外線)光を照射することで情報を消去します.例えばプロセッサ・コアで使用されるブート・コードやプログラムを格納するという目的に最適でした.OTPROM (one time programmable read only memory)と呼ばれる窓のない安価なメモリLSIも登場しました.これはEPROMと異なり,1回だけプログラムできるメモリLSIです.
マイクロプロセッサLSIにOTPROMコアを組み込むことも可能です.ただし,特別なフォトマスクや製造工程が必要となります.製造コストが割高になるため,OTPROMを内蔵することは少ないようです.
1990年ごろ,フラッシュ・メモリが登場しました.フローティング・ゲート技術を用いたフラッシュ・メモリ・セルの値は再設定可能です.例えば,そのデバイスがシステムに実装されている状態で,何度でも繰り返し書き換えることができます.1990年代の初期には,EPROMよりもNOR型フラッシュ・メモリが大量に出荷されるようになりました.フラッシュ・メモリはシステムLSIにも組み込まれましたが,この場合は製造コストが増大します.現在,プロセッサなどの外付けメモリには,かつてのEPROMやEEPROMに代わってフラッシュ・メモリがよく使われています.