車載アプリケーション・ソフトウェアの移植性を高める通信仕様とその実装 ――下位層を意識せずECU間のインターフェイスを実現する「OSEK COM」
1.OSEK COM仕様の概要
OSEK COM仕様は，欧州の自動車メーカを中心とした仕様策定団体「OSEK/VDX注1」によって規定された，メッセージ・ベースの通信仕様です．そのため，OSEK COMはOSEK OSの利用を前提としていますが，OSEK COMの要求する各種サービス注2を満たしていればほかのOS（あるいはOSなし）の利用も可能です注3．
OSEK COM仕様の目的は，自動車制御装置向けソフトウェアの通信環境を提供することによって，通信インターフェースの共通化や内部通信および外部通信などの動作を規定し，移植性を向上させることです．
また，自動車制御装置に求められる機能は多様で，かつ利用できるリソースにも幅があり，ソフトウェアの規模もまちまちです．OSEK
COM は，このような多様性にこたえるために，次に示す四つの適合クラスを用意しています（表1）．
- CCCA――最小クラスで内部通信（Unqueued messages による送受信サービス）のみに対応する．メッセージを送受信できる
- CCCB――内部通信（Unqueued message と Queued message による送受信サービス）のみに対応し，CCCAクラスのサービスおよび通信状態の参照を提供する
- CCC0――内部通信と外部通信の両方に対応している．CCCAクラスのサービスに対応し，通知クラス2，バイト・オーダ（変換），ダイレクト送信モードをサポートする
- CCC1――最大の適合クラスであり，内部通信と外部通信に対応している．OSEK COMが規定するすべてのサービスを提供する
注1；「OSEK/VDX」は自動車のECU（電子制御ユニット）間のインターフェースに関する仕様であり，OS，通信，ネットワーク管理の三つについて定義している． 注2；タスク，イベント，割り込み処理サービスを必要とする． 注3；OSEK COMのCCCB（ECUの内部の通信を規定した適合クラス）は，部品として利用できるように非OS環境を意識した実装になっている．
表1 OSEK COMの機能と適合クラスの対応
この表は，OSEK COMの機能と適合クラスごとの対応を示す．TOPPERS/OSEK対応のOSEK COMは適合クラスCCC1に対応している．つまり，OSEK COMの規定するすべてのサービスを提供できる．
出典：OSEK Communication Specification 3.0.2
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