車載アプリケーション・ソフトウェアの移植性を高める通信仕様とその実装 ――下位層を意識せずECU間のインターフェイスを実現する「OSEK COM」

服部博行

tag: 組み込み

技術解説 2005年10月20日

●○● Column  ●○●
車載ネットワークの発展

 TOPPERSプロジェクトの会長である名古屋大学の高田広章氏は,自動車制御ネットワークの発展について,表A-1のような段階でとらえることができると発言されています.現在の車のステアリングを考えてみます.例えば,第2段階で実現されるステアリング補助機能では,操作する部位(ハンドル)と実際に操舵する部位(ステアリング・ギア)が物理的なパイプ(ステアリング・コラム)で接続されており,たとえ補助機能が障害により停止しても,最低限のステアリング機能は動作します.しかし,X-by-wireシステム(従来のメカニカルな機構を電子制御とネットワークで代替するシステム)になると,物理的な接続がないため,通信が停止した場合はステアリング機能が動作しないことになります.このように,通信機能は自動車の基本機能部位にまで浸透し始めています.

 今後,車載ネットワークへの期待はさらに高くなることが予想されます.とくに,X-by-wireシステムなどは,ネットワークが自動車の基本機能を担うこととなり,高速な通信速度と高い信頼性が求められます.

表A-1 車載ネットワークの発展段階

段 階
内 容
第0段階
  • 自動車制御にネットワークが使われていない段階
  • エンジン制御,ブレーキ制御が個別に電子化(コンピュータ化)され,それぞれが独立に動作している段階
第1段階
現世代ネットワーク :CAN通信など
  • 各制御システムが車載ネットワークを通じて,制御品質を向上させるために有用なデータを交換する段階
  • 各制御システムはおおよそ独立して動作
  • 万一,ネットワーク障害が生じた場合,制御品質が下がりはしても,致命的な状況にはならない
  • 時間制約は比較的緩やか
第2段階
現在,この段階の実用 化が始まったところ
  • 自動車制御ネットワークを通じて,ミッション・クリティカルでないサービスを提供する段階
  • 個々の制御システムがネットワークを通じて協調動作することで新しいサービスを提供
  • ネットワークに障害が生じると,そのサービスは機能しなくなるものの,自動車の基本機能は保たれる.  例えば,安定走行補助機能(トヨタ自動車のVDIM:Vehicle Dynamics Integrated Managementなど),車線維持システムなど
第3段階
FlexRay通信はこの 段階を目ざしている
  • 自動車制御ネットワークを通じてミッション・クリティカルなサービスを提供する段階
  • ネットワークに障害が生じると,自動車の基本機能が損なわれる(X-by-wireシステムなど)
組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日