車載アプリケーション・ソフトウェアの移植性を高める通信仕様とその実装 ――下位層を意識せずECU間のインターフェイスを実現する「OSEK COM」

服部博行

tag: 組み込み

技術解説 2005年10月20日

2.TOPPERS/OSEKカーネル対応の OSEK COM

 本来,OSEK COM仕様は,OSEK OSの環境下で動作することを想定して策定されています.しかし,アプリケーション開発者はかならずしもOSとCOMの両方の機能を求めているわけではなく,どちらか一方のみを利用したい(あるいはどちらか一方を選択せざるをえない)というケースもあります.

 このような状況の場合,車両制御以外のソフトウェア開発ではOSを使用せず汎用の通信モジュールを利用するというよりも,OSを利用して専用の通信モジュールを新たに開発するというケースが多いように筆者は感じます.

 しかし,車両制御ソフトウェアの開発では,かならずしもOSのほうが通信モジュールよりも多く選択されるとは断定でません.事実,自動車ではOSを利用しないシステムが大半を占めているわりには注4,通信モジュールであるCOMを使用したいというケースが多くあります.これは,ECUのハードウェア・リソース条件が厳しく,OSと通信モジュールの両方の利用が難しいことと,ECU間の通信機能が必須であるためだと考えられます.

 1台の車には非常に多くのECUが搭載されて高度な機能を実現しています.しかし,それらのECUは異なるメーカから提供されたものであり,たとえ同じ通信規格を用いていても,通信異常時の処理などの細部の仕様は各社各様であり,ECU間の接続の検証は困難を極めています.そのため,厳密な通信規則を守って通信処理を実現するには,統一された仕様が必須となります.このような疎結合のマルチプロセッサ・システム注5には,通信処理はある意味,制御の要であると言えます.そのため,車両制御ソフトウェアにおいてOSを利用せずにCOMを利用するケースがあると考えられます.

 このような理由から,TOPPERS/OSEKカーネル対応のOSEK COMの実装は,基本的にOSEK OS環境下で動作しますが,OSを利用しない場合の実装も視野に入れています.

 注4;ボディ系ECUの多くはOSを使っていない.制御系ECUにおいても,比較的大きな制御システムを除いて,現状はOSを使用していない.  注5;プロセッサごとにOSが存在し,複数のプロセッサが独立して動作するシステム.  

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