マイクロ波帯のMEMS応用技術の動向 ――RF MEMSは課題を克服し，無線機器の性能向上に貢献できるか？
図5に，ミリ波/サブミリ波帯のビーム・ステアリング・グリッドを示します13），14）．これは，MEMSスイッチを利用してアンテナの指向性を変える応用技術の一つです．ここで，グリッドを構成する個々のエレメントは，Siの異方性エッチングを用いて製作されたひし形の導波管であり，その中に10層のカンチレバー型スイッチが配置されています．それぞれのスイッチには，容量可変の微小キャパシタが組み込まれており，それぞれ移相器の役割を果たします．各エレメントの移相量を制御することで，グリッド透過波の伝搬方向を変えることができます14）．
2）フィルタへの応用
カンチレバー型のMEMSスイッチは，そのレバー部の幅を広げることにより，容量可変のキャパシタンスとしても利用できます．これをフィルタ構造に組み込んで，中心周波数が可変のミリ波帯フィルタが試作されています11）．
〔図5〕カンチレバー型スイッチを組み込んだビーム・ステアリング・グリッド
個々のエレメントに容量可変の微小キャパシタが組み込まれており，それぞれが移相器の役割を果たす．1グリッドの中の多数のキャパシタンスを制御することで，グリッド透過波の伝搬方向を変えることができる．
