RF MEMSは実用化への1歩を踏み出した ――『RF MEMS and Their Applications』

水野皓司

tag: 半導体 実装

書評 2003年2月12日

RF MEMSは実用化への1歩を踏み出した

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Vijay K.Varadan , K.J.Vinoy , K.A.Jose 著
John Wiley & Sons 刊ISBN:0-470-84308-X
25×17cm
394ページ
11,749円(税別,amazon.co.jpの2003年2月10日現在の価格)
2002年12月01日(初版第1版)





 最近RF MEMS(高周波マイクロマシン応用技術)に関する本が,米国で立て続けに3冊発行されました.研究としての第1段階が終わり,この分野が次の実用化の段階に向けて動き始めたことを意味しているように思われます.

 従来,この分野で動きの少なかったわが国でも,ようやく(大部分はまだ水面下ではあるのだが...)RF MEMSの開発が始まりつつあります.その動機としては,以下の課題への対応が考えられています.

  1. 高周波化に伴う回路部品の微細化
  2. システムの高集積化
  3. 広帯域化と損失の低減

 さて本書の特徴ですが,まずその扱っている範囲が広いこと,また参考文献が充実していることなどが挙げられます.全体のページ数は約400です.対象とする読者は,現場の技術者や大学院生などであり,実際にこれらの人に対して行われた講義やセミナなどをもとにして書かれたようです.

 第1章ではRF MEMS技術の全般について,LIGAプロセスを含む製作法,トランスデューサ(電気機械変換器),センサなどについて記述しています.第2章では材料を取り上げ,半導体や薄膜に加えて,ポリマ材,およびそれらに対するマイクロマシン技術(加工法)について述べています.SU-8を含むポリマ材についても紹介されており,これは本書の特徴の一つとなっています.

 第3章では,各種MEMSスイッチについて,その動作機構や損失の原因などについて説明しています.実用上問題になると思われるスイッチの寿命,あるいは実装に関する考察などは本書では扱われていません.これらについては,まだ研究段階ではあるのですが,現状についての紹介があると現場の技術者にとって今後の開発の役に立つように思われます.

 第4章は,容量やインダクタなどの集中定数素子に関する章であり,これまで製作された多くの実例が紹介されています.近年の通信システムでは,チャネル数を増やすためにバンドパス・フィルタ技術に対する要求が高まっていますが,第5章ではこうしたフィルタについて述べています.微小機械振動子,SAWデバイス,FBAR(film bulk acoustic resonator),分布定数線路などのフィルタが,使用周波数によってすみ分けて使用されることが述べられています.第6章は移相器について説明されており,MEMSスイッチを用いた実例などが紹介されています.第7章では,MEMS技術の伝送線路製作への,また第8章ではアンテナ開発への応用について実例が紹介されています.

 第9章は,RF MEMS技術の重要な応用分野と考えられている集積化や実装についての記述です.現在のところ,これらについて実用化された技術は現れていませんが,本章では将来進むべき方向を示唆しています.


水野皓司
東北大学電気通信研究所 テラヘルツ工学分野

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