マイクロ波帯のMEMS応用技術の動向 ――RF MEMSは課題を克服し,無線機器の性能向上に貢献できるか?

水野皓司

tag: 半導体 実装

技術解説 2002年10月29日

●RF MEMSスイッチが普及するのは3年後

 現在マイクロ波やミリ波帯の回路は,MMIC(モノリシック・マイクロ波集積回路)注3が主流です.それに加えて,RF MEMS技術を用いると,図1に示したように,フィルタ,スイッチ,アンテナ,共振器,あるいは回路調整機構などを1チップ化することが可能となります.例えば,上述のホーン・アンテナ・アレイ(図6)は,マイクロマシン応用技術としてはきわめて初期に開発されたものですが,ホーン・アンテナ中に形成された薄膜上に検出素子(この場合はBiマイクロボロメータ注4)が形成されています.また,ビデオ信号増幅用の回路も各ホーン・アンテナの間に配置されています.この例に示されているように,RFのSOC(system on a chip)的なMEMSデバイスの設計・開発が今後も進んでいくことでしょう.

 また,MEMS技術は,高周波回路の開発に対して別のアプローチも与えてくれます.例えば,近年,導波管回路が使われなくなったのは,大量生産性に欠けることが主な理由です.上に紹介したように,MEMS技術を利用することによって,今後はミリ波帯以上の高い周波数帯では再び導波管回路が復活する可能性があります.回路インピーダンスの値,あるいはその調整の容易さなどの点で,導波管回路は優れた点を多く持っているからです.

 現在の課題が解決され,MEMSスイッチが実用化されると,その効果はきわめて大きいものとなるでしょう.実用化の時期は,早いもので3年後になるとの予測もあります.

 RF MEMS の実用化については,今後,次に示すような点が課題になるでしょう.

  • 実装技術(窒素封入など)を開発する
  • 取り扱える電力をWレベルにする
  • 寿命を長くする
  • 動作電圧を下げる
  • 価格を低下させ,量産性を向上させる

 日本のマイクロ波帯,ミリ波帯の技術は,世界でもきわめて高いレベルにあります.また,日本の部品メーカは,MEMS技術のセンサ応用については世界でも最先端の技術を数多く開発しています.これらの実績を背景に,RF MEMS技術についても,今後活発な製品開発が期待されています.

 注3;MIC(マイクロ波集積回路)において,GaAsやSiなどの半導体基板上にR,L,C,トランジスタなどの回路素子を一括して製造するもの.モノリシックMICという.
 注4;非冷却型センサの一つ.

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