マイクロ波帯のMEMS応用技術の動向 ――RF MEMSは課題を克服し,無線機器の性能向上に貢献できるか?
1 RF MEMSスイッチはどんなもの?
上述したように,スイッチ用のMEMSデバイスはマイクロ波の応用として期待されている主要な技術の一つです.これまでにサーフェイス・マイクロマシーニング技術注1を用いて,さまざまな形式のスイッチが製作されています10),11),12),13).上に述べたもののほかに,MEMSスイッチの動作には次のような利点があります.
- 低損失(最大0.1dB),かつ低電力動作
- 高いアイソレーション(30dB以上)
しかしその一方で,現時点では以下に示すような問題点が残っています.
- 取り扱える電力が小さい(10mW~100mW)
- 応答速度が遅い(10μs未満)
- 寿命が短い
- 実装が困難
- 動作電圧が比較的高い(30V~50V)
注1;Si基板をベースに,その表面に積層した薄膜を利用して各種の構造体を作成する技術.この技術を用いると,ミクロン・オーダまたはサブミクロン・オーダの構造体を実現できる.