マイクロ波帯のMEMS応用技術の動向 ――RF MEMSは課題を克服し，無線機器の性能向上に貢献できるか？
●MEMSスイッチは移相器やフィルタに応用される
次に，MEMSスイッチを応用した回路として，移相器とフィルタについて説明します．
1）移相器
MEMSスイッチの応用として現在もっとも活発に開発が行われているものは，移相器（信号の位相を電気的または機械的に変化させるもの）です．移相器は多くの分野で使われています．近年，さまざまな分野でアンテナの指向性を時々刻々変えることが要求されていますが，移相器はそのためにも重要なデバイスです．
図4は，MEMS スイッチを利用したディジタル移相器の例です．この例では長さの異なる2種類の回路をMEMSスイッチで切り替えるようになっており，それが4列並んでいます（4ビット移相器）．この回路の最大動作周波数は40GHzであり，周波数が10GHzのとき，損失が1dBであると報告されています．これまでの半導体スイッチを用いたものでは4dB以上の損失があり，MEMSスイッチが非常に低損失であることがわかります．
〔図4〕 4ビット移相器の例
4組の長さの違う線路の組み合わせが形成されており，MEMSスイッチで上下どちらを選ぶかによって線路の全体長が変化する．
