フラッシュ・メモリの高速化技術と最新の不揮発性メモリの動向 ―― フラッシュの次を担うのは、フラッシュかそれとも...

柴田茂則,太田豊

tag: 半導体 電子回路

技術解説 2008年7月31日

●○● Column ●○●
フラッシュ・メモリの信頼性

 フラッシュ・メモリ特有の信頼性として,エンデュランスとデータ・リテンションがあります.

・エンデュランス

 エンデュランスはデータ書き換え可能な回数のことです.FNトンネル電流が酸化膜(絶縁膜)を流れるときに,酸化膜に一部の電子がトラップされます.それが積み重なると,トンネル酸化膜に電圧をかけてもトラップされた電子によって電界が弱められ,電流が流れにくくなります.これがエンデュランスを制限している物理現象です.酸化膜にトンネル電流を流す限り,この現象を抑えることはできません.この現象は不可逆的に起こるので,半導体メーカがエンデュランスを保証する場合には,抜き取り試験を行う必要があります.エンデュランスを改善するために,酸化膜質の改良はもちろん,酸化膜への電圧のかけ方や,同じセルを何度も書き換えないようにする回路などの工夫が行われています.

・データ・リテンション

 データ・リテンションとは,フローティング・ゲートの電荷が時間変化することによって,記憶されたデータが失われるまでに要する時間のことです.フローティング・ゲートが帯電している状態では,外から電圧をかけなくてもフローティング・ゲート周りの絶縁膜には電圧がかかった状態になっています.セルの大きさにも依存しますが,1日に1個の電子がフローティング・ゲートを出入りすると10年でデータが失われるといわれています.半導体メーカはフローティング・ゲート周りの絶縁膜を書き込み・消去特性が劣化しない範囲でなるべく厚く作り,摩耗故障でデータが失われないようにセルを設計します.また,高温でベークして加速スクリーニングを行うことにより,欠陥性のデータ・リテンション不良を防いでいます.

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フラッシュ・メモリの読み出し,消去,書き込み動作

 フラッシュ・メモリの読み出し,消去および書き込み時にセルにどのような電圧がかけられて動作しているのでしょうか.ここでは,NOR型とNAND型に分けて解説します.

(1)NOR型フラッシュ・メモリ

 NOR型フラッシュ・メモリは1本のビット線とソース線の間に複数のメモリ・セルが並列に接続されています(図A).データ読み出しを行う場合は,選択ビット線を充電した後,選択するメモリ・セルのワード線に電圧"H"を印加し,選択セルのみONとなるようにします.選択ビット線に接続されたメモリ・セルを通じ,ビット線の電圧はソース線に放電されます.選択されたメモリ・セルがONの場合とOFFの場合では,図Aに示すようにビット線の放電速度が異なります.ビット線の電圧をセンス・アンプに取り込んで増幅して出力します.

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図A 読み出し・書き込み回路

 NOR型フラッシュ・メモリでは,各メモリ・セルのドレイン(ビット線)とソース端子にそれぞれ1個ずつコンタクトがあります.1ビットの読み出しを行うためにはただ一つのメモリ・セルを流れる電流を検出すればよいことになります.

 消去には,セルあたりの電流が小さい一般的なFNトンネル電流を利用します.ワード線に高電圧を印加して,そのワード線に接続されているセルすべてを一括消去します.書き込みはチャネル・ホット・エレクトロン注入を利用します.書き込み時間は短くなりますが,大きな電流を流す必要があります.

(2)NAND型フラッシュ・メモリ

 NAND型フラッシュ・メモリは,1本のビット線とソース線の間に複数のメモリ・セルが直列に接続されています(図A).データ読み出しは選択ビット線を充電した後,選択するメモリ・セルのワード線を0Vに,非選択のワード線をすべてVbiasにし,非選択セルはすべてONになるようにします.選択されたメモリ・セルがONのとき,ビット線の電圧は選択されたメモリ・セルおよびそれに直列に接続された複数の非選択メモリ・セルを通じてソース線に放電されます.その後ビット線電位をセンス・アンプに取り込んで増幅して出力します.

 NAND型フラッシュ・メモリでは複数セルでコンタクトを共有することになるので,セル・サイズの大幅な縮小が可能です.短所としては,読み出し時に複数のメモリ・セルを通過したセル電流を検出するため,NOR型フラッシュ・メモリと比較して読み出し電流が小さく,読み出しに時間がかかります.

 消去は,一般的なNOR型フラッシュ・メモリと同様,FNトンネル電流を利用します.特徴的なのは,書き込みについてもFNトンネル電流を利用することです.セル当たりの書き込み時間は長くなりますが,セル当たりの電流が小さいため,同時に大量のメモリ・セルに並列書き込みを行えます.そのため大きなサイズのデータを書き込む場合には,一般的なNOR型フラッシュ・メモリよりも高速に書き込むことができます.

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