フラッシュ・メモリの高速化技術と最新の不揮発性メモリの動向 ―― フラッシュの次を担うのは、フラッシュかそれとも...
● シャドウイングを行わない場合読み出し高速化が必要
今後,コスト・メリットの大きいNOR型シリアル・フラッシュ・メモリが使われる場合が増えていくと考えられます.しかし,NOR型シリアル・フラッシュ・メモリは,NOR型パラレル・フラッシュ・メモリに比べてデータの読み出しが遅いというデメリットがあります.比較的小さなシステムで採用されている(2)および(4)のシステム構成においてシャドウイングを行わない場合は,NOR型シリアル・フラッシュ・メモリが遅いことでシステム性能を悪くしてしまう可能性があります.これを回避するにはシリアル・フラッシュ・メモリの読み出し速度(アドレス・アクセス時間とデータ転送速度)を高速化する必要があります.
本稿では,アドレス入力を行ってから最初のデータが読み出されるまでの時間を,アドレス・アクセス時間ということにします.アドレス・アクセス時間が遅いと,システム側ではフラッシュ・メモリのデータが確定するまでウェイトする必要があり,システム性能を落とす原因になります.また,連続したアドレスのデータを読み出す場合,1秒間に何ビットのデータを読み出せるかをデータ転送速度といいます.NOR型パラレルのアドレス・アクセス時間は70nsでデータ転送速度は230Mbps程度ですが,一般的なNOR型シリアルのアドレス・アクセス時間は600nsでデータ転送速度は50Mbps程度です.これは,SDRAMの性能(1ピンあたり100Mbps以上)に比べて劣っています.
● 書き込みを高速化すると生産工程の効率アップ
フラッシュ・メモリの書き込み速度はDRAMなどに比べると非常に遅く,特にNOR型フラッシュ・メモリにおいては書き込みに何分もかかってしまう場合があります.主にプログラム・コード格納用として使われているNOR型フラッシュ・メモリにおいても,書き込み速度が遅いことが生産工程や顧客サービスにおいて問題になる場合があります.
書き込みを高速化すると,工程でのプログラム書き込み時間が短縮できます.今まで書き込み時間を短縮するため,基板実装前に複数個並列でプログラム・コードを書き込む必要がありました.書き込み時間が短ければ,最終のテスト工程などで1個ずつ書き込むことも可能になります.また出荷後,万が一プログラムの書き換えが必要になった場合でも,短時間で書き換えられることで,ソフトウェア・アップデート中の事故の確率を下げられます.書き込み高速化のメリットを図3に示します.
図3 書き込み高速化のメリット
● 代表的なフラッシュ・メモリの種類と速度比較
ここで,実際に市販されているフラッシュ・メモリの読み出し・書き込み速度を見てみます.表1に各種フラッシュ・メモリのメーカのカタログ値をまとめました.現在市場に出ているフラッシュ・メモリとしてNAND型,NOR型パラレル,NOR型シリアルの3種類を例に挙げています.このほか,韓国Samsung Electronics社のOneNANDメモリは,NAND型フラッシュ・メモリとSRAMを組み合わせて高速なランダム読み出しに対応しています.データ格納とともに大容量のソフトウェア格納が必要な携帯電話やディジタル・スチル・カメラなどの用途を意識しており,前項の(3)CPU+RAM+NANDの構成のうち,RAMとNANDを代替するものとなります.